水泳を始めて、クロールや背泳ぎはなんとか出来ても平泳ぎだけはどうしてもうまくいかない・・・
子供の頃、見よう見まねで泳いだ顔を上げたままの平泳ぎ、でも今はそれさえもうまくいかないですよね。
あまりにも無駄に手で水をかいていませんか!平泳ぎはほとんどキックと言っても過言ではありません。
平泳ぎは4つの水泳種目のなかでは最も難しく最も遅い泳ぎ方です。でも楽しい水泳には欠かせない泳ぎ方です。
私は60年の水泳歴の中で平泳ぎは競泳の専門種目で長年研究しています。
その中で自分なりに平泳ぎの泳ぎ方については確固たるテクニックをもっていいます。この経験を活かして平泳ぎが上手に楽しくなるためのエキスを読者の皆様にお伝えしていきます。
1. 水泳初心者のための平泳ぎの泳ぎ方
平泳ぎとは競技種目では最も遅い泳ぎ方です。でも競技以外では、顔を上げて楽に泳げることができます。
もし洪水に襲われた時や洋上に投げだされた時に平泳ぎに長けていれば顔をつけずに救助を待つことができます。
そういう意味では背泳ぎと同様にサバイバルな泳ぎ方だと言えます。
平泳ぎが上手なれば、溺れそうな幼子を助けることさえできる価値の高い泳ぎ方なのです。
でも水泳競技となるとどうして一番遅いのでしょうか。
次の動画を見てほしいのですが、

手をかいて推進力を得ようとすると呼吸と膝を曲げてキックの準備に入ります。
その時、胸から膝までが壁のように大きなブレーキとなります。
またキックのフィニッシュで大きな推進力を得たあと呼吸と腕のプルが動き始め、これまた大きな抵抗を生じます。
さらに呼吸はうつ伏せの状態から顔を前に上げるために気道が狭まり呼吸がとても苦しいのです。
したがって平泳ぎとは強い推進力を得ようとしても強いブレーキを受けるので、ストロークの回転数を上げても同様にブレーキが強くなってしまうのです。
でも、私が65歳以上69歳年齢区分で、平泳ぎにエントリーしているかというとパワーはさほど無くても強い選手に対抗できるからなのです。
平泳ぎはパワーよりも、いかに抵抗をなくすかが理想の泳ぎ方なのです。
したがって上手な平泳ぎの泳ぎ方というは水の受ける抵抗を最小限にすることなのです。
泳いでいる時に、その抵抗を最大に受けるのは胸です。
呼吸をするときに顔を上げますがその時に胸というか上半身全体で水の抵抗をもろに受けます。そのことから平泳ぎの事を英語ではBreststrokeというのもうなずけます。
水泳の中で遅くて苦しいというネガティブな泳ぎ方であると言いましたが、ボジティブなところもあります。
それは呼吸の時に前がよく見えるという事です。
水泳の競技中、自分の視野の中に誰かいればその人より遅く負けています。でも視野に誰もいないということはトップで泳いでいる可能性が高いです。
ゴール前、視野に誰もいないこの快感は最高です。
またスポーツクラブの水泳プールでクロールの上手な人は沢山のいますが、平泳ぎが上手な人はほとんどいません。
疲れない、苦しくない、それでいて前に進む平泳ぎが私の理想です。そんな平泳ぎの泳ぎ方をこれから伝えていきたいと思います。
平泳ぎの泳ぎ方、そして基本的な初心者向けのテクニックについては次の記事を参考にしていただければ平泳ぎの基礎の基礎がよく理解できると思います。
2. かき過ぎない5つの練習のコツ

初心者にとって、水泳の楽しさをクロールや背泳ぎで実感できた頃、次なる泳ぎ方といえば平泳ぎです。
でも平泳ぎはキックの水の捉え方がまるで変わってきますのでこの変化にパニック状態になってしまいます。
足の甲で水を捉え蹴っていたクロールの足の動きが平泳ぎはまるで違います。
まず、足の使い方、平泳ぎにおいても泳ぎ方のまず第1はキックからです。
2-1. キック練習から始めましょう
イラスト動画の泳ぎ方に注目してほしいのですが上体のことは見ないで下半身だけの動きをしっかりとイメージに焼き付けましょう。

足を引きつけて速やかに後ろに蹴る。足の裏で水を捉えて後ろに押し出しています。
次に押し出した足の裏は完全に上を向くように足首が返っています。そして足首が水面近くまで近づいてきています。つま先までしっかりと伸びて足の親指さえも上に反り返っています。
この瞬間がキックのフィニッシュです。
この練習をビート板を使って練習しましょう。
まずはビート板練習の前にプールの壁のエッジを両手で掴んで平泳ぎのキック練習をするといいと思います。
クロールでは足の甲で水を蹴っていた泳ぎ方が平泳ぎは足の裏で水を捉えて押し出すのです。
こうした感覚の違いを覚えましょう。
2-2. まず陸上練習から
陸上での練習は水泳初心者の場合とても重要です。
水泳は水の中なので水泳動作を行うには陸上でのイメージづくりが欠かせません。
2-2-1. 椅子に座って
まず、椅子に浅く座ります。
足の幅は肩幅です。
足は逆ハの字、出来るだけ足のつま先を広げます。
足の親指に力を入れて立ちます。
また椅子に座ってこの動きを繰り返します。
イメージは足の裏側で水を捉えて水を押し出すイメージです。
次に椅子に座ってこの動きを足を浮かせてやってみましょう。
今度は床がありませんから、足の裏で水を捉えてイメージで両足の親指同士が着くフィニッシュまでです。
フィニッシュを迎える時には足を上に上げます。
2-2-2. バランスボールを使って
次は腹這いでやってみましょう。
バランスボールが有れば一番いいですが、ない時は座布団3枚ほど重ねてその上で腹這いになって
先ほどの椅子で行った足の動きを復習しましょう。
伸びた足を足首を肩幅くらいに引き寄せます。
次に足の裏で水を押し出すイメージで両足の親指が着くフィニッシュまで押し出します。
フィニッシュでは足が下の位置ではありません。足の裏が水面近くまで浮かすようにフィニッシュです。
イメージができたでしょうか。
2-3. 水中での練習
では今度は水の中でやってみましょう。
プールの壁で両手をプールのエッジを持ってやってみましょう。
両手を掴むとやりにくい場合は片一方の手をプールの壁で支えるとやり易いと思います。
強い水流が身体の後方に行くのが確認できたら上手くいった証拠です。
力強く、水流が後ろに流れる感じです。
蹴り込みは少し下の方向、フィニッシュで両足を水面近くに引き上げるイメージです。
このフィニッシュが強い推進力を生みますので頑張ってください。
ではビート板を使って平泳ぎのキック練習に入りましょう。
顔を上げての練習です。
1回のキックで止まるまで姿勢良く足は水面近くです。
止まる寸前になってから2回目のキック動作に入ります。
出来るだけ1回で進む距離を稼げるように何度も練習しましょう。
さらに1回で進ませるためにキックと同時に顔を水につけて胸の抵抗を無くしましょう。
止まる寸前まで顔を上げません。止まりそうになったら顔の前で息を吸ってキック動作に入ります。
そしてフィニッシュまでです。
でもこの時一気に蹴り込むというよりも、足が空回りしないように水をしっかり足の裏で捉えていることが重要です。
2-4. かき過ぎない!(プルはコンパクトに)

では手の泳ぎ方に入りましょう。まずは上の動画を見て欲しいと思います。
手のひらの動きを見て欲しいと思いますが、円を描いているように見えます。
でも手のひらで推進力を得ようとは思わないで欲しいのです。
ですから平泳ぎのプルはごくごくシンプルにイメージしてください。
まずまっすぐ伸ばした両手の手のひらで水を両横に押しやります。開いたところで素早く息を吸う感じです。
開いた両手は速やかに閉じて合掌です。その時手のひらを閉じるのを両ひじを合わすのを先行させるイメージがいいと思います。
脇を締める感じです。脇を締めることで前方に対して身体の抵抗が小さくなります。
注意点は両方の手のひら、そしてひじも両肩を結ぶ線より後方には行かないように気をつけてください。
この練習はコースロープに向かって立ち、腕だけコースロープの前、自分の身体はコースロープの後方です。
平泳ぎのプル練習をします。両手を開いて呼吸してまた肘誘導で合掌です。また素早く両手を前にまっすぐ出す感じです。
上手になるにつれて手のひらで上手に水をコントロールができるようになります。
2-5. コンビネーションスイム
キックとプルの練習が済んだところで次はコンビネーションスイム練習に入ります。
次の動画を見て欲しいのですが、手のプル時、足は動かせていません。
キックの時両手も同様に邪魔はしていないのがわかると思います。
手を前に出す時にキックが作動してプルのフィニッシュから伸びている時にキックもフィニッシュを迎え全身で水中姿勢をとっているのがわかると思います。
・初心者のうちは推進力はプル:0、キック:10のイメージでいてください。
プルの時に呼吸です。この呼吸時に大きな抵抗を胸で受けますので、出来るだけ速やかに呼吸をしてキックの推進力の邪魔をしないことが最大のコツです。
私が平泳ぎのレース中の力区分はプル:2、キック:8くらいです。
でもイメージの中ではプル:1、キック:9そしてさらにキック:10くらいのイメージの時が一番成績がいいです。
力が入りすぎてプルで頑張る時はいつも記録が良くないです。
初心者の場合は特にこの力区分を参考にして欲しいと思います。


1ストロークが終了してプルはフィニッシュ、両手は真っ直ぐ前、少し遅れてキックもフィニッシュ、そして蹴伸びの水中姿勢です。
この時の姿勢を一つ前の動画を見て欲しいのですが前方から受ける抵抗は肩幅だけです。
初心者のうちはその時の姿勢で腰が下がり足も下がっているために大きな抵抗を受けてブレーキとなります。
止まりそうになったら次のストロークに入る。そんなイメージでちょうどいいと思います。
呼吸は常に息を吐き続けキックのフィニッシュで出し切るのです。
両手で水を横に開いて顔を上げて素早くパーッと音を出す感じで息を吸います。
息を吸っている時間が長いほどブレーキの時間が長いと承知おきください。
顔を前に出して息を吸うのは気道が全開とならないでとても苦しい吸息なのです。
顔を上げないように気道を開いたまま吸息ができるとベストなんですが、そのために顔を上げずに吸息の空間を作る必要があります。
同時にプルによる推進力を得る、これがトップスイマーの技なのです。
3. より上手な平泳ぎを目指して

では少しでもより上手な泳ぎ方をお話します。
上の画像はプルのフィニッシュに至る呼吸、吸息の瞬間です。
顔のあごは上げていません。うつむき加減の吸息は気道が開いているために十分な酸素補給ができています。
素早い脇の締めで前方からの抵抗を最小限にしています。両手からの水流が推進力の威力が良く感じ取れます。
そして今から強烈なキックの推進力を得て水中姿勢に入ろうとしている瞬間の画像はとても素晴らしく小柄な彼のテクニックとパワーを物語っています。
3-1. 水中姿勢

私が一世を風靡していた学生時代には平泳ぎの水泳競技ルールでは頭の水没禁止でした。
頭の一部が常に少しでも水面上にあるのがルールだったのでタイム記録は非常に泳いものでした。
でも今は水没が許される今のルール下のおいてタイム記録は格段に向上して、私の平泳ぎは60代でも若い人のクロールには負けません。
それはともかく頭を水没させて極限の水中姿勢(ストリームライン)が取れることなのです。
キックのフィニッシュで得られた推進力を使ってまるで壁を蹴ったくらいの推進力を得ることができます。両耳を両腕で挟み込み、いやもっと頭の後方で腕を合わせるくらいに腕を真っ直ぐにして水中に突っ込みます。
水中に突入した時が最大の推進力がありますので、決して身体はただひたすら真っ直ぐにすることだけに集中しましょう。
この時に腰や下半身が沈んでいるのが初心者です。
この体幹の維持が平泳ぎに限らず水泳における最大の泳ぎ方のコツとなります。
ではどうイメージすればこのような泳ぎ方ができるのでしょうか、その答えはたったひとつ、お腹を凹ませることです。
最大のドローンイン呼吸で、お腹を極限まで凹ませるのです。
このドローインについては次の記事が参考になると思いますのでご一読ください。
3-2. ストローク数を少なく200mを目標に

そして平泳ぎ初心者の当面の目標を200mに定めて少しずつ距離を伸ばしていきましょう。
平泳ぎが辛いのはそのほとんどが呼吸にあると思います。
どのようなタイミングの呼吸が一番楽か、色々ストロークリズムを調整して探りましょう。
一番ご自分に合う楽なストロークを見つけられたら平泳ぎの楽しさは格別となるでしょう、そして200m(25mプールで4往復)が楽に泳げるようになるでしょう。
4. まとめ
まず平泳ぎの泳ぎ方をマスターできるということはキック100%で水泳に十分な推進力が得られます。
それは何を意味するかというと、手を使わず前に進むことができることにもなります。
バタ足とは比べ物にならない推進力があります。この平泳ぎのキックは仰向けでも有効です。

溺れそうになった子供を手で抱えながら泳げるのです。
洪水の土砂水の中をなんら問題なく助かることのできるサバイバル水泳なのです。
平泳ぎは一番呼吸が苦しくて難しい泳ぎ方なので、平泳ぎの呼吸法が身につけばクロールにおいても素晴らしい呼吸技術になるでしょう。
・平泳ぎはサバイバル水泳です。
・平泳ぎは水泳の中でも一番呼吸筋が鍛えられます。
・平泳ぎの上達は水泳4種目の上達に繋がります。
・平泳ぎはとても奥が深く、非力な女性やシニア世代にもオススメの泳ぎ方です。
水泳競技で水泳4種目を泳ぐ個人メドレーというのがありますが、現在療養から復帰した池江璃花子選手、バタフライ・クロールの世界的水泳者ですですが、彼女が個人メドレーを目指せばゴールドメダルの量産が可能です。
一世を風靡した水泳の魔術師イアン・ソープに匹敵する世界を舞台に日本女性スイマーが期待されています。彼女の場合、平泳ぎが苦手種目です。この平泳ぎの克服が実現することを祈って応援しています。
余談はさておいて、平泳ぎでいかに楽に泳ぐかその泳ぎ方について初心者向けに解説してきましたが、もっともっと上手になって水泳が楽しいものになるように願っています。
平泳ぎの泳ぎ方の難しさは大きく水の抵抗を受けること、そしてその抵抗が水泳者の大きな負担となる。
ならばどうすればそのネガティブな状態を少しでも回避できるかについてお伝えしてきました。
そして水泳初心者にわかりやすく、中上級の水泳者にも参考になるコツやイメージについて盛りだくさんお話しできたので参考になる点があったと思います。
最後まで読んでくださり心から感謝しています。ありがとうございます。
次の関連記事もとても興味深いですから是非お読みください。
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。