水泳は全身運動で全ての筋肉を万遍無く使う運動として広く知られています。
特に広背筋や三角筋と並んで背中の広い範囲に広がる、僧帽筋は僧侶のかぶる帽子のように広く背中に分布する筋肉です。
私は肩こりと水泳との関係において僧帽筋が大きなキーポイントになると考えています。
一般的に言って、水泳の世界で肩こりの症状を訴える人はあまり聞いたことがありません。
目次
1. 僧帽筋強化は水泳上達の秘訣
水泳選手の上半身は強烈な逆三角形で小さなお尻に細く長い足に代表される素晴らしいシルエットです。
男子も女子も水泳選手の水着姿は目を見張ります。
その体型にあこがれて水泳を始める人も少なくないと思います。
1-1. 水泳の上半身、ストロークでよく使う筋肉
まず水泳のベースとなる上半身で中心的な役割をなす筋肉を押さえておきましょう。
1-1-1. 三角筋

三角筋は肩のもりあがりに影響する筋肉で逆三角形の体型を一番強調する筋肉かもしれませせん。
水泳においてもストローク中のキャッチプル、リカバリーと全ての行程で活用される筋肉です。
1-1-2. 広背筋

広背筋は脇の下から背中の中心にかけて分布する筋肉で水泳のストロークでは非常に重要な筋肉です。
この広背筋の発達によって胸板の厚みが強調されて、より発達した上半身のシルエットが得られます。
1-1-3. 僧帽筋

首の根元から肩周りそして背中の中心部ととても広く分布する筋肉です。
そして肩甲骨を包みこむように分布していますので姿勢の保持、肩こり、頭痛の原因にもなりかねない筋肉です。
それでは僧帽筋の詳しい解説と水泳上達との関係について述べていきます。
まずもう少し詳しく僧帽筋を見ていきましょう。
1-2. 僧帽筋の構造と働き
先ほども述べたように僧帽筋は背中の一番表層に位置している筋肉で薄くて弱いという特徴があります。
でも相撲や柔道などの選手が首筋から背中にかけての筋肉の盛り上がりが顕著ですが、僧帽筋の発達によるものと考えられます。
その同じような力が水泳選手にも必要となります。
それは水をかくという動作の中で腕の入水エントリーから水を引っ張ってくる力のパワーの源になるのがこの僧帽筋です。
上部では肩甲骨を引き上げるきっかけになり、鎖骨にもつながります。
中部では肩甲骨を覆い肩甲骨の動きを相対的に支配すると同時に肩甲骨を回転させたり、引き上げ、引き下げたりと肩甲骨を守りながら支配しています。
また下部では肩甲骨を引き下げる働きがあると同時に肩甲骨を引き寄せ全身の姿勢維持にとても大切です。
そしてこれら広く分布している層帽筋が単独で働くわけではなく、同時に作用して肩甲骨の動きを支援しています。
1-3. 水泳との関係
水泳が上手かそうでないかの決定的判断基準は水泳中の水中姿勢です。
1-3-1. 僧帽筋と水中姿勢
まっすぐに伸びた手の指先から足の指先まで、身体の軸がまっすぐになっている姿勢を維持できるかどうかにかかっています。
また一方ストローク中においても腕がまず入水エントリーをします。そしてそのエントリーと同時に手のひらが水をキャッチします。
水をキャッチすると言う表現はわかりにくいと思いますが、お風呂にはいって前の水を手のひらで身体の方へ寄せてくるときに腕の動きでしっかりと水を捉えていると実感が得られるのは手のひら、手首、ひじなどが上手く働いたときです。
この感触を泳いでいる時のストローク中に実現させようと思うと、腕の全ての筋肉、関節、骨格が上手く働かなければなりません。
1-3-2. 1ストロークの長さを伸ばす肩甲骨
腕の先の一番遠くの水をキャッチして身体の後方一番遠いところまで水をかくフィニッシュまで送り出すストロークを実現させるためには肩甲骨のコントロールが欠かせません。
そして僧帽筋と広背筋と三角筋が有機的に連携協働して大きな推進力を作り出すのです。
1-3-3. 筋肉と骨格との協働連携
僧帽筋がしっかりしていることで三角筋や広背筋が安定し、肩甲骨のコントロールが思いのままという効率の良いストロークが実現していきます。
2. 肩こり予防に最適(鍛えすぎる事がない)

前章で僧帽筋やその他の水泳で必要となる代表的な筋肉について述べてきました。

それは水泳する上で筋肉は比重が高く浮力が少なく、それでいて大きな水の抵抗を受けるため、今はジムでの筋トレはあまりやりません。
腕の筋肉や三角筋などは面白いほど簡単に筋肉がついてしまいます。でも水泳中にこの筋肉を隠すのに苦労します。
ストロークに必要な筋肉量は仕方のないところですが、広背筋や僧帽筋はいくら鍛えても大きな水抵抗を受けることはありません。
それに上腕についた三角筋などを肩甲骨をしっかりと引き上げて隠してくれる僧帽筋の強化を私は心がけています。
それは日常生活の猫背や肩こりなどにも良い影響を与える僧帽筋はいくら鍛えても鍛えすぎることは無いと考えています。
2-1. 僧帽筋の鍛え方
僧帽筋を鍛えるといえばジムで懸垂・腕立て伏せ・ダンベル系の筋トレをイメージされると思いますが僧帽筋も鍛えられますが、ほかの上腕筋なども鍛えてしまうので私流の僧帽筋を鍛える方法は水泳とストレッチで鍛えます。
2-1-1. ストレッチ
肩が柔らかい人は耳の後ろ、後頭部で両腕がくっつくくらいのイメージでしっかり伸ばしましょう。
このとき両方の肩甲骨がくっつけるような意識で肩甲骨を働かせましょう。
そうすることで僧帽筋に大きな収縮が起こり、僧帽筋だけを鍛えることができます。それでいてその他の腕の筋肉はストレッチ効果が起こります。
このストレッチを日常生活いろいろな局面で、リラックスをかねてやって見ましょう。
筋トレ効果を生むために30秒くらいのストレッチに30秒くらいの休息インターバルで2、3セットをいつでもどこでも行うことができますので、ストレッチ兼僧帽筋トレが私のお勧めです。
そしてこのストレッチは水泳でのスタート、ターンではかならず強く意識して水中姿勢ストリームライン維持に活かします。
2-1-2. ストロークで肩甲骨を強く意識
クロールや背泳ぎでは多少ローリングさせてでも肩甲骨を引き上げて一番遠い水をキャッチしましょう。バタフライ平泳ぎでは腕の伸ばすのではなく肩甲骨を伸ばすというイメージでがんばりましょう。
この意識が僧帽筋を強く鍛えてくれます。
首筋あたりから背中の僧帽筋が盛り上がってくると思います。でもこの層帽筋自体が薄い筋肉であるために水の抵抗を受けることはありません。
2-2. 僧帽筋強化は肩こり防止、五十肩予防
したがって前に述べたストレッチがこれら加齢症状の予防であり対処措置でもあります。
なんといってもストレッチですから筋肉に大きな負荷を与えるものではありません。
そして僧帽筋は強化するといっても若いころの筋力に戻し強くするという狙いですから、良いこと尽くめです。
2-3. 姿勢改善
デスクワークで骨盤は前傾となり、上半身は猫背、内臓は圧迫されて身体に悪影響というのが生活習慣病の原因のひとつであることは誰もが承知しているところです。
前章で述べたストレッチは姿勢改善の特効薬になるでしょう。
また日々姿勢を良くする習慣が何を隠そう大きな僧帽筋強化のメニューになりうると考えられます。
自宅で食事するときも団欒のときも姿勢を正して僧帽筋強化を図りましょう。
3. 体幹部の強化を忘れない!

では次に水泳をより上手にそしてより速くなるために忘れてはいけない僧帽筋以外のもう一つの重要なポイントがあります。
それは体幹部の強化です。
僧帽筋強化で上半身の姿勢が良くなっても体幹部が弱っていては下半身は沈んでしまったり、腰が湾曲したりとまっすぐな水中姿勢が維持できません。
陸上で姿勢を正せばおのずと体幹部も鍛えられますので陸上での姿勢改善ストレッチをがんばることをお勧めします。
3-1. 陸上での姿勢改善
腹筋や背筋をジムでするのも効果的ですが、とても手間がかかり億劫でもあります。
私のお勧めは壁を背にした姿勢改善です。
自宅でも職場でもどこでも良いです。壁を背にして立ちましょう。
まず、かかとを背に合わせます。そしてお尻、肩、頭を壁に合わせます。両腕はきょうつけの位置です。
顔はあごを引いてしっかりがんばって全てのポイントをくっつけましょう。
いかがですかとても苦しいと思います。この姿勢を30秒くらいがんばりましょう。
そしてつぎに開放リラックス30秒です。これを2、3セットやりましょう。
つぎにさらに負荷を高めます。
今のポーズでは背中と腰あたりに空間があるはずです。この空間をインナーマッスルをつかってなくしましょう。
いかがですか、背中と腰あたりの空間がなくなってきたのではありませんか・・・
これはとても負荷が高くきつい体幹部の筋トレです。そしてこのポーズは同時に僧帽筋にも刺激があり、まさに水中姿勢ストリームラインの完成形です。
3-2. 水中練習
陸上で練習した姿勢改善ストレッチを今度は水中で行います。
陸上では両腕はきょうつけの位置でしたが水中では僧帽筋をフル回転させて両腕をしっかり伸ばして両耳をふさぎましょう。できる人は後頭部で両肘を合わせるようなイメージです。
この水中姿勢をプールのスタート位置で立った状態でやってみましょう。
陸上でおこなったお腹を凹ませるのも忘れないでください。
では体勢を元に戻して、いいですか壁を蹴って水中蹴伸びスタートです。
しっかり壁を蹴って力いっぱい水中姿勢をとってください。まず5m目標です。
頭の位置が5mに達したら一応合格です。

そして同時に体幹部の強化が行われ、僧帽筋も合わせて鍛えられます。
まさに水泳の基本練習は十分に筋トレ効果があるということを述べておきたいと思います。
4. まとめ
水泳が上手になり、そしてより速く泳げるようになりたい。
さらには30分でも1時間でものんびりと優雅に泳いでいたいと願うのはシニアの水泳愛好家の皆さん共通の願いだと思います。
その一番コツ、キーポイントは水中姿勢です。この姿勢を維持できる筋力、とバランスが必要となります。
そのために、上半身では僧帽筋と体幹部の強化が欠かせません。
この記事では特に僧帽筋にフォーカスを当てて解説してきました。
肩甲骨を柔軟に稼動域一杯動かせることが最大のコツなのです。それが綺麗で華麗な水中姿勢を維持できるのです。
逆に言えば水中姿勢を練習すれば僧帽筋や体幹部の強化が促進できるとも言えます。
そして肩こりや五十肩など加齢による弊害も防ぎ、治療にも貢献できるのです。
いかがでしたでしょうか!参考になる点も多々あったかと思います。
逆三角形で素晴らしい肉体の水泳選手ですが、飛び込みスタートした時の水中映像のスローモーションVTRを観るとどの選手も無駄な筋肉など一つも無く、まるで魚かイルカのような美しい水中姿勢に感動されると思います。
これこそ、僧帽筋や体幹部の筋肉のなせる業なのです。
どうぞ、日常での姿勢改善をはかり、美しい水中姿勢を自分のものにして優雅に楽しく水泳を続けていきましょう!と願ってこの記事は以上とさせていただきます。
最後までお付き合いいただき心から感謝しています。ありがとうございました。
なお、以下の記事も興味深い内容となっていますのでご一読いただけたら幸いです。
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。