【低学年水泳一番の課題は水慣れ】克服の方法と危険を学ぶ体験事例紹介

小学生低学年に対する水泳や水慣れの指導については文部科学省における小学校の学習指導要領の体育、保健体育「水泳系泳ぎ水泳」のねらいや内容を踏まえた「水泳指導の手引き」において具体的な指導の内容が記載されています。

この記事では、小学生低学年における水慣れを主体に、浮く・泳ぐための基本運動、そして高学年になりクロールや平泳ぎなどにスムースに移っていけるような具体的な水泳指導について解説していきます。

特に父兄の親御さんに伝えていきたいと思います。

しかし最近の小学生は習い事として幼児期から水泳スクールに通うなどによってかなりのレベルに至っている場合もあります。

では低学年の水慣れについてそして水泳についてどのように考えていけば良いのかこの記事で考えていきたいと思います。

いしはら
こんにちは!

けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。

1. 低学年水泳一番の課題は水慣れ

低学年の水慣れ

低学年の水慣れ

文部科学省では、体育、保健体育の「水泳指導の手引き」なるものを定めており、その理論と実践について詳しく述べられています。

小学生の実践例として低学年の実践方法について水泳授業の基本的なねらいや授業づくりの考え方を示しており、1年生、2年生と詳細な具体例をあげて解説がなされています。

かいつまんで述べますと

1-1. 水泳授業の基本的なねらい

小学校で初めて水泳を経験する児童にとって、大きな影響を及ぼす水泳授業において水泳が好きになり、より興味を持ってもらうために仲間と仲良く活動ができる。

そして水の中で顔つけ、息をこらえる、潜る、浮くなどの能力を高めながら、2年生ではさらに浮く・潜るなどの水中での活動を安全に行い、将来の中学年レベルでのさらなる向上に繋げていけるように配慮が必要です。

1-2. 授業のあり方について

低学年の指導に当たって大切な7項目をあげています。

低学年指導項目

1水への心理的抵抗を減らすため、誰もができるところから始める。

2少しずつ「できる」ことを増やす。

3水中での活動の頻度を保証し、待ち時間を減らすため、1人から4人までの活動を中心。

4学習する内容をすぐに理解できるよう、方法をあまり変えずに内容を変化さていく。

5「できるようになったこと」でも繰り返し楽しめるので内容を変化させ動きの習得を測る。

6水深の浅いところから始める。

7基礎技能の定着を図るためゲーム化する。

1-3. 1年生での単元計画

約束づくり(着替え、入水)

水に慣れる遊び(シャワー、水中走り、水のかけっこ、電車ごっこ、顔つけ、息こらえ、息だしなど)

浮く、潜る遊び(壁につかまって息こらえ、ジャンケンまたくぐり、壁につかまって浮くなど)

1-4. 2年生での単元計画

1年生の単元計画に加えて、

水慣れ(顔つけ、ボビング、イルカジャンプなど)

浮く、潜る遊び(バブリング、ボビング、リング・スティック拾い競争、ビート板使用など)

これらの単元を細かく指導方法、そして評価の方法などについて詳しく解説してあります。

詳細は学校体育実技指導資料第4集水泳指導の手引き

同第2章実践編

2. 水慣れ克服の方法

小学校の低学年では水泳スクールに通う子供達と通っていない子供達に水に対する感受性が大きく異なりますが、それは低学年である1、2年生のうちに解消できるものと考えています。

たとえ水泳スクールに通っていて例えばクロールが完成系に近いといっても水に対する反応であったり、感じ方はさほど大きな違いは無いと思います。

たくさんの同級生とともに過ごす水泳授業ではやはり団体行動で学んでいくでしょう。また水泳スクールの経験上クラスの中では代表格となっていくのは当然だと思います。

そんな中でまず低学年に必要な水中での運動能力は水の中で動き回る、そして潜る、浮く、そして最終的に泳ぐという運動を学び経験するようになります。

2-1. 水の中で動き回る

ポイント
水の中で動き回る事の難しさを水慣れで経験するのが一番貴重な体験だと思います。

水の中では水の抵抗を受けて動きに支障が出る。そして浮力の影響を受けて身体が軽くなるようで動きずらい!などです。

また身体の中でどの程度の部位が水中に没しているかによって身体が感じる温度などを体験します。

2-2. 潜る(水中で目を開ける)

次に水の中で足がついた状態での運動はほとんど陸上での運動と変わりはないのですが、身体全体が水没する状態になればまるで今までに経験した運動であり、恐怖心が芽生えます。

ポイント
その恐怖感を乗り越えて潜る、水中で目を開けるなどの運動・動作ができるようになる必要があります。

低学年で一番最初に乗り越えなければならないハードルだと思います。

2-3. 浮く

全身を水没させて目を開け、恐怖心との対峙が済み次の段階は浮くという異なる次元との遭遇です。

ここで異次元と表現をしましたが、これはまさに私自身がそう感じました。もちろん幼い頃のことですが、今でも初めて浮いた感触は衝撃であり、子供ながらに大きな満足感があったのを今でも忘れられません。

この浮く経験を低学年のうちに経験させてあげることほど素晴らしいものはないと私は思います。

幼児時期から水泳スクールに通っている子供にはその体験はとっくに済んでいるかもしれません。

ポイント
この浮く経験を小学校中学年まで持ち越さないように低学年のうちにしっかりと体験させてあげるのが水泳指導で最も重要だと私は考えます。

2-4. 息つぎ

浮く経験ができると今度や浮いた状態で活動ができる欲求が芽生えます。

水中では息ができない状況を学んだ子供はどうすれば息をすることができるかを学びます。

ポイント
水面から顔を出すことで息つぎができるのを本能的に知っています。でも顔を出せば浮いた姿勢状態が崩れ、沈んでしまうのことを体験します。

そして息ができないことで場合によっては苦しさ、そして恐怖感を体験できます。

呼吸が自由にでき、そして浮いていられる場合によっては潜って遊ぶ事もできる。

この段階にまで到達できると低学年での水慣れが完結すると言えるでしょう。

でも一般的に言って浮くこと、息つぎは積み残し、中学年への引き継ぎ項目となるのが普通でしょう。

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3. 危険を学ぶ体験事例紹介

前章において、小学生低学年(1、2年生)レベルでの水泳(水慣れ)についてに述べてましたが、より重要な危険について深掘りして行きたいと思います。

管理と監視が行き届いたプールにおいても事故はいつも隣り合わせの環境です。

プールで想定される事故

・頭から飛び込んで頭部を底に強打する!

・友達同士での悪ふざけで溺れる!

・泳いでいて腕などが交錯して怪我をする!

このような事故的な危険はいつもありわけで、これらのリスクを最小限にするための配慮がどんなプール施設でも配慮がなされています。

しかし日常生活における水のとの暮らしの中での危険を子供達に体験させ学習させるのも大切です。

例えば

不慮の事故

・海や川に転落、溺れそうになった時

・洪水などの突然襲ってくる自然災害などの場合の対処

・お風呂で溺れそうになった時の対処

があると思います。

こうした予期せぬ事態に低学年の子供たちにとって最低限の知恵だけは教えておく必要があると思います。

低学年の水慣れ学習においてこれらのことをしっかり学習させ、水に対する態度、もしもの場合の思考と判断力を水慣れ学習で学ぶ必要があると私は考えています。

3-1. 衣類は泳ぎにくいけれど保温効果がある

低学年とか学年にこだわらず、小学生であればどの年代においても衣服を着た状態で水の中に身を置く体験をする必要があります。

小学校の指導要領の中にはないのかもしれませんが、私がジュニアのインストラクターを経験したスクールでは全てのクラスで「着衣泳」のカリキュラムが6月にありました。

私はこのカリキュラムの重要性を痛感しています。

夏休みの前に必ず実施するカリキュラムです。

子供達に衣服を着たまま泳がせて泳がせるのです。

ポイント
子供達は泳ぎにくいことを体験します。そして泳ぎ難いけれど衣類を身につけておれば体温が奪われることが緩和されることを体感します。

究極はどんなに水泳が得意でも水辺では遊ばない、もし万が一問題があれば直ぐに大人を呼ぶことを教えます。

これは低学年であっても必ず体験させるべき水慣れ訓練だと思います。

3-2. 水の中では息を吐く

それから水の中では息を吐くことを教えねばなりません。

人間は子供に限らず水中では息をこらえます。要するに息を止めるのです。パニック状態になれば完全に呼吸はできません。でも水中で息を吐くことを学べば顔を上げた時に瞬時に空気が吸えるです。

これを知らない子供たちは顔を上げるとまず、目一杯息を吐いてそれから息を吸うことになります。一瞬の顔が水面に上がった瞬間に息を吐くために息が吸えないのです。

ポイント
水中では息を吐き続けて落ち着くことを教えなければなりません。

これは通常の水泳指導においても重要です。息継ぎがうまくいかない原因のほとんどが水中で息が吐けていないのが最大の原因です。

3-3. 暴れない、ジッとする勇気

それから水中ではバタバタ動けば人の身体は沈んでしまいます。

比重の重い下半身から沈み、腕などはバタバタ暴れることでさらに浮力を失います。

人は肺臓というライフジャケット、浮き袋を持っていることを子供達に教えねばなりません。

上を向いて仰向きになり、大きく息を吸えば陸上での川や池、プールにおいても人は浮くことを低学年の子供達にも体験させることが必要だと考えています。

ポイント
何か万一の場合には何か浮くものに捉まるのは当然ですが、仰向けになって大きく息を吸ってジッとする勇気を難しいですが知識として体験させ教える必要があるように思います。

3-4. ゴーグルの功罪

次に私はゴーグルの着用の是非について考えて見たいと思います。

私の長い水泳経験の中ではゴーグルの使用は比較的新しいと感じています。

私たちが学生の頃にはゴーグルそのものが世に出ておらず、水泳選手はゴーグルの着用はなかったです。

そして当初はガラスのゴーグルだったために、学校プールでは壊れた場合のガラスの破片が危険という理由で使用禁止という時代がありました。

そして今ではプラスチック製の安全性の高いゴーグルが世に出回り、水泳をする人は誰もがゴーグルを着用するようになりました。

水泳の面から言っても視界がクリアで恐怖心を払拭できることもあって幼児期であっても、水泳を始める場合には最初に使用するアイテムとなっています。

さらに今ではプールの殺菌剤の塩素に対するアレルギー防止のためにもゴーグルは必需アイテムとなっています。

でも考え方を変えればもしもの場合にはゴーグルの使用は考えらレません。

ゴーグルの無い状態で水中で目を開き、安全を確認、事故防止を裸眼でしなければなりません。

ポイント
従って私はゴーグルを使わない裸眼での水慣れも体験しておかなければならないと考えます。

もちろん私の考え方は到底受け入れられないのかもしれませんが、低学年の水慣れで取り組むべき内容かは別にしても非日常空間である水の中でのことを考えれば避けて通れない問題だと考えています。

4. まとめ

以上小学校低学年レベルでの水泳指導として水慣れについて文部科学省の指導書から私が常々考える水慣れカリキュラム。

そして私のジュニアの水泳インストラクターの経験から感じていることなど盛りだくさんで子供達の水慣れについてお話しをさせていただきました。

いかがでしたでしょうか・・・

どれも釈迦に説法だったかもしれません親御さんには是非頭の片隅においていただきたいと思います。

おわりに

今日、水辺での事故や不慮の災害など水をめぐる環境はとても厳しい問題が多く、低学年の子供達は常に危険と隣り合わせとなっています。

しっかりと身を守るための水泳、そして水慣れカリキュラム!

・水の中で安全に動き回る

・水中で目を開けて潜る

・浮く

・息つぎ

低学年を指導する立場におられる方、そして低学年の子供さんをお持ちの親御さんたちに水慣れについて重要な点を取りまとめ解説をさせていただきました。

今回の記事は以上とさせていただきます。

最後までお付き合いをいただき心から感謝しています。ありがとうございました。

なお、以下の記事も興味深い内容となっていますのでご一読いただければ幸いです。

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