水泳で泳ぎの分析に用いるdpsという評価指標があります。
そしてこのdpsを伸ばしてより上手により速く泳ぐための秘訣を学びましょう。
だれでも速く泳ぐためにパワーと回転数を上げて泳ぐと思いますがこのdps1回のストロークで進む距離が長いフォームでなければそれは空回り状態となり、かえって水の抵抗を受けることにもなりかねません。
このdpsは選手だけに限らず水泳経験の浅いビギナーにもとても大切な概念ですから頭の片隅にいれておいて欲しいと思います。
目次
1 水泳のdpsって何?
冒頭にも述べましたがdpsは1回のストロークで進む距離を示す指標です。
このdpsを常に管理していれば水泳者の技術のレベルの推移を把握できるわけです。
そしてある程度このdpsが一定になれば後は、スピードアップなどペースコントロールは回転数を上げるだけとなり、水泳者の意識でペースコントロールが可能となります。
でも現実にはそううまくはいきません、レース時の体調、精神状態などいろいろな要素が絡み合ってdpsも回転数も微妙に変化するものです。
従ってdps指標はコーチなど指導者が常に管理して、選手の指導の一環として分析・評価に使用するに使うものであって、選手にとってはどれだけ重要な概念なのかは私は少々疑問に感じています。
事実私自身がdps指標を意識したことは一度もありません。
でも1ストロークの距離(dps)を伸ばす意識は常に強く持って練習してきました。
従って、dpsはその指標データである数値に意味があるのではなく、dpsを伸ばす意識が重要なのだと私は考えます。
1-1. dpsの計算方法
dpsの計算方法はいたって簡単で25m、もしくは50mのストローク数を数え、25mもしくは50mをストローク数で割れば簡単に出てきます。
また公式レースには50m毎のラップが結果速報に表示されてきます。50mのストローク数があれば1ストロークのタイム速さも表せることができます。
したがってdpsには1回のストロークで進む距離と1回のストロークでの速さをデータとして管理することができるのです。
このdpsはスタートやターンでの水中姿勢もあり練習中の上達も考慮すればあまり汎用性はなく、水泳者個人の長いデータの蓄積があったうえでの評価指標と使えると思います。
1-2. ストローク
dpsを考えるにあたって大切な概念はストローク数です25mをまた50mを何回のストロークで泳ぐかという数値です。
平泳ぎやバラフライにおいては1ストロークは腕の動き足のキック1行程が完結するまでは1ストロークと言いますが、クロークや背泳ぎの場合は右ストローク、左ストロークと表現する場合があります。
例えば一般的に2ビート、4ビート、6ビートなどという表現をする場合には右左両方での1行程が完結するまでのキックの数で2、4、6ビートと言います。2ビートなら右左1回ずつということになります。
また一方では背泳ぎのターンの場合、ターン前5mのフラッグを通過したら何ストロークでターン姿勢に入るかストローク数を毎回数えて練習しなさい!
という表現をよくしますが、この場合のストロークとは右左で2ストロークの意味です。
2. dpsを伸ばしてより上手に!より速く!泳ぐための秘訣

前章でdpsの概念的なことをお話しさせていただきましたが、水泳が上手になるためにそしてより速くなるためにはこのdpsいわゆる1ストロークの距離を伸ばす意識が大切なのは当然の事です。
ボートを漕ぐオールを考えてもらえればオールを入水させしっかり水をとらえて最後までオールをかくことでボートは速く前進するのと同じです。
水泳の場合もしっかりと入水後に水をキャッチ、そのキャッチした水をプル、そして後方にその水をプッシュするこの一連の動きがdpsでありその力でdpsの距離が伸びるわけです。
2-1. DPSを伸ばす
ではまず、水泳で平泳ぎ以外の泳法によるdpsについて距離を伸ばすテクニックについて述べていきましょう。
伸ばしてより上手により速く泳ぐための秘訣
2-1-1. 水をキャッチ
水をキャッチすると言葉では簡単ですが、水をとらえるのはそんなに簡単なことではありません。
このキャッチテクニック次第でdps、水泳の上手、そうでないかが決まるほど大切なことです。
このキャッチですがその前に入水位置がまず重要なポイントです。普通に腕をのばして入水させるでけではまだまだビギナーと自覚してください。
腕を伸ばすという表現は適切ではなく、肩甲骨可動域最長の位置まで肩甲骨を伸ばすという表現がイメージにピッタシです。
例えば襖と箪笥の隙間に1万円札が落ちていると仮定します。
腕の伸ばしだけでは指が触れる程度のところに1万円札があります。
この時どうしますか、もちろん何か物差しでもなにかあればそれを利用すると思いますが、誰でもすることはまず腕だけでなく身体を少しひねって肩甲骨から懸命に伸ばすと思います。
そうすると指で1万円札が挟める位置にまで来ると思います。このイメージを水泳の腕が入水するときに活用するのです。
肩を少しひねるために身体はすこしローリングします。そして肩甲骨の可動域を最大限活用してしっかりと腕を伸ばす。その位置がキャッチポイントです。
それから水をとらえるキャッチ動作に入ります。
とても感覚的な表現ですが、この動作はお風呂でもできますので手首と手のひらの全体を上手に使っての水のキャッチを覚えましょう。
上級者においてもこのキャッチポイントをチェックするのはとても意味のある練習です。いつも意識しているか振り返りましょう。
2-1-2. 水をプル
次にとらえたキャッチした水を身体の近いところまで引っ張ってくるプルです。
この時はとらえた水を取り逃がすことなくしっかりと引っ張ってきます。
セオリーではS字曲線を描きながら引っ張る方法とまっすぐに引っ張るする方法がありますが。私は真っ直ぐに引っ張るプルです。
水を逃すことなくとは手のひらの大きさと角度そして肘までの腕の活用です。
肘を下げてプルをすれば手のひらだけでの推進力ですが、肘を高く上げてのプルでは肘から下も水をとらえ推進力を得ることができます。
2-1-3. 水をプッシュ
身体のところまで水をとらえて次は進行方向にむかって水を押して最後の推進力を得る行程です。
このプッシュまでの行程全てが切れ目なく滑らかな一連の動作になった初めて大きな推進力を得ることができます。
ボートのオールをもう一度イメージするとオール入水後水をとらえてローギヤでキャッチ、その後ギアチェンジ、セカンドギアでプル、そしてサードギアでプッシュという感じでしょうか。
2-1-4. リカバリー
手のかき、キャッチ、プル、プッシュを完結させれば素早く空中をリカバリーし、また入水ポイントに戻るという1工程(1ストローク)でdps(距離)となります。
従ってリカバリー中は左右もう一方のキャッチがスタートしているというタイミングになります。
従って最も腕が疲労することなく最短距離をリカバリーしなければなりません。
そのためには水面を肘から抜くという動作が有効です。フィニッシュの位置からリカバリーすれば距離も長く腕の疲労にもつながります。
2-1-5. キックの重要性
どんな泳法もキックの推進力もばかにできません。クロールにあってもキックによる推進力はdpsの大きな武器になります。
そしてキックはなによりも推進力を作りながら身体を浮き上がらせる浮力を生み出します。たとえば水中翼船のようなものです。
速い選手は状態が浮き上がっているように泳いでいます。
クロール、背泳ぎ、バタフライについては以下の記事が参考になると思います。
2-1-6. 平泳ぎのdps
さて、次に平泳ぎについて述べていきましょう。
平泳ぎの泳法はとても難しく、そして各個人の考え方個性もあります。でも基本はdpsの値で評価できます。
いかに速くdpsを生み出すかです。
平泳ぎの1ストローク中で一番大切な推進力はキックです。

選手レベルの水泳者にあっては腕の推進力が大きなポイントですが、中上級者レベルでは腕のプルでキックの推進力を邪魔しないことが大切です。
いずれにしてもdpsは腕のプル次第では低下する場合も多いと理解してください。
プルの頑張りは得てして失速原因になりかねないということです。
平泳ぎの場合dpsを伸ばすために必要なことは大きなパワーを生み出すキック、そして抵抗のない水中姿勢、次に呼吸時の大きな抵抗を最小限にする腕のテクニックです。
この平泳ぎについては以下の記事を参考にしてください。
2-2. より上手に!

いかがですかdpsの概念的なことが理解されたと思います。
ではここでいかに上手に泳ぐかについて述べていきましょう。
結論を言いますとdpsをトコトン伸ばすことが上達の秘訣です。
そしてストローク数を数えることを習慣化するようにしましょう。
原理的にはdpsなのですがこんな難しいことは考えずにともかく25mのストローク数を数えてみましょう。
クロールであれば右左で1ストロークで数えましょう。
そしてどんな泳法であっても25mのストローク数を数えるのはとても意味がありますので習慣にすると良いです。
2-2-1. むやみに新しいストロークに入らない
そして平泳ぎにあってはできるだけ蹴伸び姿勢(ストリームライン)を長くとってdpsを伸ばします。失速寸前までストリームラインを維持することが上手になる秘訣です。
そしてストローク数がすくなければ見栄えもよく上手に見えるものです。
2-2-2. キャッチ→プル→プッシュの一連の動きにメリハリを
腕のかきをキャッチ、プル、プッシュと分解して説明はしましたがこれは一連の途切れのない動きです。スムーズに流れるような動きでしっかり推進力が得られるように練習しましょう。
このトレーニングはやはり長く泳ぐしか上達の道はありませんが、ストロークのこの点を意識するかしないかは大きな課題です。
より遠く、より確かに、よりパワフルに水をキャッチすることが一番重要です。そのキャッチで得た初速を維持加速するためにも最初のローギアーでの初速が一番重要でしょう。
そのために、肩甲骨の柔らかさ、肩のインナーマッスル、高い肘を維持する腕の筋力が必要です。場合によっては筋トレも必要でしょう。
>また水の中でタイミングよく水をとらえるスカーリング技術などがとても大切です。スカーリングとは手のひらの動きだけで浮力を生み出す動きですがこれはお風呂でも練習ができます。
2-2-3. スタート・ターンを最大限活用
それからストローク数を少なくする極めつけの方法はスタート・ターンの水中姿勢による伸びです。この水中での姿勢は水の抵抗を最小限にできればスピードもあり、距離の稼げ、とても効率的です。
2-2-4. 呼吸とのタイミング
次にストローク数を少なくすればおのずとdpsは伸びていくのですが呼吸とのタイミングあわなければ意味がありません。
私は陸上での運動での呼吸のタイミングと同期できるような呼吸が水泳でも一番苦しくないと考えています。
もちろん陸上で普通に行っている呼吸はとても早いですが、細く長い呼吸の深呼吸や瞑想呼吸などいろいろあると思いますが、陸上での呼吸で水泳をイメージして一番楽な呼吸を見つける練習も大切かと思います。
ただ水泳の場合は顔が水中にある場合は息を吐き続けるのが基本だと考えています。水中で全て吐き切れば顔を上げた瞬間に息を吸う意識がなくても顔をあげて「パー」と声を発するだけで息が自然に入ってきます。
2-3. より速く!

では次にタイムアップを目指す選手や上級水泳者のためのdps改善について述べていきたいと思います。
まずタイムアップを目指すにあたって目標は自己ベストの更新だと思います。
そのためにはdpsの向上、ピッチの向上とこの2つの要因がなければタイムアップ、特に自己ベストは期待できません。
1ストロークの距離とピッチが共に向上されて初めて成し遂げられるものです。
dpsだけ、もしくはピッチだけでタイムアップを図ろうと思ってもそれは無理があると思います。
2-3-1. dpsの向上
担当コーチがいらっしゃる環境にあればdpsを毎回計測記録取っておかれてコーチと共に研究されると良いでしょう。
そのためには肩の筋トレ、肩甲骨の柔軟性、そしてより遠い水をとらえる意識が重要になってきます。
そして1ストロークの時間の短縮は練習あるのみとなってくるでしょう。
2-3-2. ピッチの向上
ピッチとは回転数です。いくらdpsが向上しても回転数が少なければタイムアップは望めません。
なかなか難しい感覚的なイメージの世界の論理かもしれませんが、ピッチを上げるには筋力いわゆるパワーを上げる必要があります。
そして自己ベストがでた時はほぼ間違いなくdpsそしてピッチが向上していると思います。
2-3-3. キックとのタイミング
互いに水の抵抗となり得るかもしれません。共に強化してもタイムアップにつながる保証はありません。
このキックとのタイミングは練習あるのみです。
そして早いピッチで泳ぐスタイルにするのか泳いスタイルにするのか自分で作っていかなければなりません。
また100mと200mでもdps、ピッチの兼ね合わせはまた違ってくるかもしれません。
200m平泳ぎの世界新記録を持っていた渡辺一平選手は大きなストロークで1回のストロークで伸びる距離がすごいです。
したがって彼は200mを得意とし、ピッチの速い小関也朱篤選手は100mを得意としています。そして北島選手は100、200m五輪連覇をなしとけました。
彼らもこのdpsとピッチの研究に命を燃やしたのと思います。
3. ストローク数を数える日常練習

ビギナーであろうと競技会を目指す選手であろうと、自分のストローク数はいつも数える習慣を持つことはとても意味のあることだと思います。
私は子供達の指導にあったてもストローク数を数えさせます。シニアにアドバイスする時も同様です。
クロールであれば右左1セットで1ストロークです。
単純にdpsが一定としてピッチが上がればタイムアップとなるわけです。
この場合、ストローク数には変化は起こりませんが、意識的にストローク数を速めてすなわちdpsをわざと短くしてピッチを上げることができます。
ピッチを上げるにふさわしいdpsにスイッチするというテクニックです。
これらの事を意識的にするためには日常のストローク数を数える習慣がとても重要になってくるというのが結論なのです。
4. まとめ
以上、今回は水泳でdpsという数学的なテーマでお話をさせていただきました。
最近dpsという概念を良く使われていますが、私はストローク数という概念の方がわかりやすいと考えています。
ですから、練習であれ、レースであれいつもストローク数と数える癖がついています。
ビギナーの人が25mクロールでストロークを数えると30,40という答えが変えてくることがあります。
その人に、次はそのストロークを半分にして泳ぎましょうと言うと、次はビックリするほど上手なクロールに変化していきます。
ビギナーにとって、ゆっくり泳ぐのはNGと思っているフシがあるように思います。
それに息をこらえる不安からどうしてもストロークは速くなるのかもしれません。
楽で伸びのあるストロークを習得してゆっくりと優雅に泳いでいただきたいと思います。
この記事ではビギナーから上級者までトータルにお話しさせていただきましたが、dpsはあまり気にせず25mのストローク数を数えてみることから始められたらいかがでしょうか。
と言うことでこの記事は以上とさせていただきます。
最後までお付き合いをいただき心から感謝しています。ありがとうございます。
なお、水泳関連で以下の記事も興味深い内容となっていますので、ご一読いただければ幸いです。
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。