水泳の競技会にエントリーをお考えのシニアスイマーの読者にとって重要な課題の一つに飛び込みスタートがあると思います。
この課題を克服するためには、どのような練習をすればいいのか色々と苦労もあると思います。
実は私の場合も所属クラブでは、プールでは飛び込みが禁止されているため飛び込みスタートができません。
毎日10本くらいスタートダッシュができればもっと良い記録が望めるのですが思うようにいきません。
こうした課題をこの記事により、少しでも克服できるように、あらゆる機会をとらえ練習していきましょう。
1. 水泳の飛び込み練習方法
水泳のスタートには2種類ありますが共に飛び込みをしっかり観察する必要があります。どのようにすれば上手く飛び込めるのかそのために必要な練習の種類そしてそのコツについてお話しします。まずは飛び込むためのイメージトレーニングが大切です。
まず、次の動画を見て飛び込みスタートのイメージを焼き付けましょう。
1-1. イメージトレーニング
動画サイトには水泳スタートが山のような種類の動画あります。またテレビ番組で水泳競技の放送されており、その映像を何度も観てイメージを頭にたたきつけましょう。
動画で多いのはトラックスタートがほとんどですが、飛び込む要領は同じですから、まずはスタート台を蹴って飛び込む何種類もの動画を繰り返し見て観察していきましょう。
そして、動画を見ないでもご自分がスタート台に立って実際に飛び込むイメージをふくらませましょう。
1-2. 段階的な飛び込み練習がコツ
1-2-1. プールサイドに座っての飛び込み
飛び込む体勢をまずとってから入水します。片方の手の甲にもう一方の手のひらを合わせて両腕を最大限前に伸ばします。
両肩と併せた手でできる三角形の中に頭を入れ、両腕で両耳を塞ぐ感じです。肩の柔らかい人なら頭の後ろで両腕を伸ばせるように後頭部で両腕を伸ばす感じです。
そしてその体勢のままプールサイドに座った姿勢から足でプール水中の壁を蹴って静かに入水します。
1-2-2. プールサイドから立っての飛び込み
次にプールサイドに立って、両足の指をかけて足の屈伸を使って飛び込みます。上体の姿勢は座っての方法と同じです。
まず膝の屈伸を使わず静かに倒れるように入水します。次に指に少し力を入れて反動を付けます。さらに膝の屈伸を使って飛び込み入水します。
ではプールサイドを思いっきり両足で踏切り遠くへ飛んで入水してみましょう。遠くへ飛ぶ感触を味わってください。
それではもう一度プールサイドから両足の屈伸を使って遠くへ飛んで頭からの飛び込み入水にトライしてみましょう。
最後に上体の姿勢は空中で取ることとして、プルサイドに両足の指をあてがって、両手はプールサイドに手のひらを合わせます。膝は折って沈みこみます。
この姿勢から膝は折った膝を伸ばす力、足指はプールサイドを蹴る力、プールサイドにあった手を大きく振り上げて得られる力、そして顔は25m先のプールの壁に視線を移して全身の伸展力、これらすべての力を総動員して飛び込みます。
これら一連の入水ができるようにこの練習を繰り返しましょう。
プールサイドから上手く入水して初速度を落とすことなく浮き上がれるようになるまではスタート台からの飛び込みスタートはやらない方が賢明です。
仮にやったとしても上手くいきませんから、コツとして何度も何度もプールサイドからの入水を練習しましょう。
ポイントは初速度を最大限にするパワーの合算です。
1-2-3. スタート台に座っての飛び込み
ではスタート台に移ります。まずプールサイドで座っての飛び込みを思い出し、全く同じ要領でスタート台に腰を掛けて、スタート台の構造を見て足を支えられる場所を探して足の指をかけての飛び込み練習を繰り返しましょう。
1-2-4. スタート台から立っての飛び込み
いよいよ最終段階、スタート台に立って飛び込みスタートをしましょう。スタートの要領はプールサイドからと全く同じです。
・次にスタート台を蹴って、頭から飛び込んでみましょう。
要領はプールサイドからの入水の要領と全く同じです。違いはプールサイドからスタート台までの高さ分だけ落差による入水スピードが増します。
コツは前に述べた足・膝・腕・視線誘導による全身の伸長力によって入水時の推進力は倍増します。
1-3. 静止からの反応力と瞬発力
飛び込みスタートの要領は以上のとおりですが、静止状態から飛び込む瞬発力は水中でも失速することなく浮き上がりストロークに入らなければなりません。ストロークを有利にするためにも出来るだけ力強く、より遠くへ入水することが有利です。
遠くへ飛び出すコツは水平に飛び出すのが一番効果的だと思います。
でもスタート合図というレース上の制限があります。それに敏感に反応する反応力がより好成績につながります。
そして飛び込みの初速度を活かして距離を稼ぐ、その初速度を殺さずにスムースな浮き上がりが成否を左右します。そのためにもスタートと同様に水中姿勢(蹴伸び姿勢)がとても重要なコツです。
2. プールでの練習
プールでの練習は競技会が近くなりますと所属クラブで飛び込み練習が設定されて、インストラクター指導の下に飛び込み練習が行われると思いますが、その練習には積極的に取り組むようにして、いろんな飛び込み方法を試してご自身に一番ふさわしい飛び込み方法を探して下さい。
そして早い時期に飛び込み方法を決めて、家でもイメージトレーニングに励んで欲しいと思います。
2-1. 飛び込み練習ができる場合
スタート台では必ず静止してから飛び込むようにしてください。静止中にタメがあるかどうか、反発力を生むタメがあるかどうかはとても大切です。
クラブでの記録会程度のレースでは特に問題はありませんが、とは言ってもレース本番は緊張感が高まります。練習時から緊張感を持って飛び込むようにがんばりましょう。
マスターズ大会など公認プールでのレースになると、水深も違います、スタート台の構造も違いますのでその点をしっかりと頭に入れて緊張感をもって飛び込みましょう。家でのイメージトレーニングにが効いてきます。良い練習ができると思います。
2-2. 飛び込み練習ができない場合
スタートダッシュの時には必ず家でやっている飛び込みスタートのイメージで繰り返すようにしてください。
そしてウオーミングアップやクールダウンの時にはプールの底を蹴ってのイルカ飛びをアップ・ダウンに入れて脚力の強化に努められると同時に入水姿勢、蹴伸び、浮き上がりまで一連のスタートをイメージして行ってください。
3. 競技会レース当日の練習
競技会当日を迎え、競技会場に到着しました。足が震えるほどの緊張感に押しつぶされるような気持になってきます。でもそれはそれだけ集中していることですから素晴らしいレースが期待できます。
今日一日頑張りましょう。そしてレース当日は結果を出す日でもありますが、これから長い水泳人生のスタートの日でもあります。
すなわち、最高の練習でもあります。結果などにとらわれず今日は競技会場でできる練習ととらえ、良い練習にするつもりで一日を有効に使いましょう。
3-1. 開会式前のウオーミングアップ
ウオーミングアップはサブプールではなくかならず競技をおこなうメインプールでウオーミングアップを行ってください。そして自分のレースのレーンでアップするのが好ましいです。
そして途中から公式スタート練習の時間が設けられていますのでその時は必ず参加してスタート担当役員の合図の間をチェックして時間がある限り、繰り返しましょう。日頃スタート練習ができない人にとっては最高の練習の場です。
スタート台、入水時、浮き上がりの感触を味わって家で徹底的に行ったイメージトレーニングとのマッチングを図りましょう。
3-2. レースまでの観戦中
自分のレースが始まるまでの間、同僚の応援も大切な役割ですが、この観戦中に各レースの本番の飛び込みをよく観察して家でやってきたイメージとレーニングの確認・修正を行ってレースに備えましょう。
それからサブプールでのウオーミングアップが認められている施設の場合、飛び込みスタートレーンが設定されている場合がありますのでチェックして可能なら積極的に飛び込み練習をしましょう。
今日はレース本番の日ですが飛び込み練習の重要な日だと考えて出来るだけ練習を重ねることがとても効果的なウオーミングアップにもなってきます。
3-3. レース本番
さあ招集場に向かう時間がやってきました。この時にはもう飛び込みの瞬間まで何も考えず、音楽でも聞きながらスタートを待ちましょう。今さら考えてもかえって逆効果です。あとは身体に任せるだけです。
音楽が聴けないのであればともかく呼吸を整えて好きな言葉を唱えましょう。呼吸は細く長く息を吐き続ける意識で呼吸し瞑想状態です。意識するのは長いホイッスルでスタート台に上がる、静止して号砲音に集中するだけです。あとは一切の感情を消し去りましょう。
3-4. レース後のクールダウン
レース後のクールダウンはサブプールでゆっくり泳ぎながら身体をほぐしましょう。
次のレースがある場合はそれに備えるとしてレースが終了すれば後は自由に過ごしましょう。もしサブプールで飛び込み可能レーンがあるのであれば積極的に飛び込み練習をすると良いと思います。こんな練習機会はめったにありませんから有効に使いましょう。
4. 家での練習
では本題の家での練習についてお話を進めたいと思いますが家で飛び込み練習などできませんが、実はそうでもありません。家では十分なイメージトレーニングと筋トレが可能です。さらに反応力と瞬発力は家での練習が欠かせません。
4-1. イメージトレーニング
家では徹底してイメージトレーニングに努めて欲しいと思います。今はネットの世界で飛び込みスタートの動画がたくさんあってイメージトレーニングには事足りることはありません。
でも飛び込みだけの解説動画も良いのですが、家ではよりイメージを高めていただくために実際のレースのスタートシーンを何度も何度も観てイメージトレーニングを行ってください。ご自分のエントリー種目の決勝レースの動画を見るのがベストです。
そしてご自身がそのレースの4レーンの選手だとイメージしましょう。入場して4レーンのスタート前に立っている時からご自身がスタートするのだとアリアリとイメージしましょう。
この家でのイメージトレーニング次第で飛び込みの失敗を少しでも無くす最大の方法ですから、レース経験の浅い方には是非家で行ってください。
4-2. 筋トレ
次に筋トレです。プールでは飛び込みに必要な筋肉トレーニングはほとんどできないと思いますので家での練習は欠かせません。
4-2-1. カーフレイズ
日本間の家であれば座敷の欄間、洋風の家であれば部屋と部屋との仕切り壁に両手を上げて飛び込みスタートの姿勢をとりながらかかとを上げ下しするカーフレイズを繰り返し練習しましょう。上げる時には飛び込みをイメージして素早く身体を上げます。動画でのイメージトレニンーグを活かせましょう。
4-2-2. スクワット
足腰の基礎体力向上のためにスクワットはご自身で計画されて日々の家での練習メニューに入れて欲しいと思います。そしてそのうち1セットは両手の振り上げ動作を入れてスクワットを行いましょう。
4-2-3. 母指球、指先の筋トレ
飛び込みに際して力の源は両足の母指球と5本の指です。この部位に関しては日頃から意識を集中させておきましょう。そしてマッサージ揉みほぐすなどの刺激も日々家では行ってください。
上記のカーフレイズ、スクワット練習にも大きな効果を発揮すると思います。
4-3. 反応力と瞬発力
家で行える練習に是非反応力と瞬発力を含めて欲しいと思います。
4-3-1. 反応力
反応力は先ほどのスタート動画ですが、スタートの瞬間に集中して合図と同時に頭を上げる反応力を向上させてほしいと思います。うつむいた顔を合図で素早く前方を向く、そして素早く顔をまた下を向いて入水をイメージです。家でおこなえる反応力は素早く顔を上げる反応です。
4-3-2. 瞬発力
家の中で飛んだり跳ねたりはできませんが素早く両手を合図とともに蹴伸び姿勢をとるのは座っていてもできる運動です。家で余裕があれば何度も繰り返し練習しましょう。
家の外へ出れば実際の飛び込みのようなイメージで上に飛べるでしょうから家での練習については効果が期待できると言えるでしょう。
スタートの集中力、反射力については次の記事を参考にされるとさらに理解が深まると思います。
4-4. 競技会間近の自宅練習
競技会間近になるとどうしても緊張してきます。極度の緊張感はスタートの反応力や瞬発力を低下させます。でも緊張感があってこそのレースです。
プールでの練習で自己ベストを出して競技会に臨むというのが最もふさわしのですが、自己ベストを含めて良い成績をおさめるためにも緊張感は必要なものです。緊張感を取り除こうと思わずに緊張感を受け入れてエネルギーに変えようと考えてください。
そのためにも家で行うメンタル面の強化は大切です。
家で、ご自身自ら緊張を高めその緊張を全てスタート台での飛び込みのエネルギーに変えましょう。
5. まとめ
水泳の飛び込みスタートの重要性について、本番競技会レースを想定しての練習について自宅家での練習も含めて解説してきました。私は長年のレース経験もあって読者の皆さまには参考になられたところ、興味深かったところなどあったかと思います。お楽しみいただけたでしょうか。
記事の中でも申し上げましたが、私たちシニアスイマーは世界を狙う日本のトップスイマーとは違います。1回限りのレースではありません。これからも長く水泳を楽しもうと考えているはずです。 レース本番は最高の練習であり、練習成果を評価する最高の効果測定の場なのです。全力を尽くせばいいと思うのです。 そのためにもそのキーポイントは飛び込みです。勇気がいるスタート台ですが、言い方をかえれば素晴らしい舞台なのです。この舞台に立てた喜びに浸りましょう。そしてこれから長く続けていってほしいと思います。
そして違うクラブの人と仲良くなって「また次の競技会で会いましょう」と声を掛け合ってお互いに成長していきたいものです。
ところで、日頃、水泳の練習で飛び込み練習などはしないと思います。それに施設によっては飛び込みが禁止されていることもあります。
でもレースにエントリーする限り飛び込みは必須です。プールでの練習に加え家でのイメージトレーニングや飛び込みのための筋トレなど、レースに向けてのメンタル面にも立ち入ってお話しさせていただきました。
最後までお付き合いいただき心から感謝しています。ありがとございました。
なお、水泳に関して次の記事も参考になると思いますので是非ご一読いただければ幸いです。
初稿:2019年4月7日
2稿:2020年11月21日
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。