水泳選手は誰もが、見事な肩幅をもち、素晴らしい逆三角形のシルエットで人の目を引きます。特別異様にさえ見える肩幅はなぜなのかと疑問をもたれるのも当然かと思います。
そして併せて、一般の人が健康のために行うエクササイズ水泳では肩幅がどうなるのかについての述べていきたいと思います。
水泳選手は肩や胸の筋肉を鍛えてより速く泳げるように日々トレーニングをしており、単に肩や上腕だけでなく、身体全体のバランスの良い身体づくりにも心を配っています。
長年水泳競技に参加してきた水泳歴60年の私の経験から読者の皆さまの疑問に答えていきたいと思います。
目次
1. 水泳選手の肩幅
ここで水泳選手と他のスポーツのトップアスリートとの比較を身長、体重に限って見ていきましょう。
1-1. 陸上スポーツのトップアスリートとの比較
肩幅のすごい水泳選手と言えば水の怪物と言われたアメリカのゴールドメダル量産選手、マイケル・フェルプスをまず最初に思い起こされる人も多いと思いますが、
フェルプスの身長は193㎝、体重は88kg
国内に目を移せば和製フェルプスと称されている現役トップスイマーで瀬戸大也選手が活躍しています。
瀬戸大也選手の身長は174㎝、体重は72kg
そしてアテネ、北京オリンピックと2種目2連覇を果たした平泳ぎのバイブル的存在、北島康介選手も肩幅の素晴らしい選手です。
北島康介選手の身長は178㎝、体重は72㎝
では陸上スポーツの代表格MLBにおける日本の立役者の小柄なイチロー選手はどうかというと
イチロー選手の身長は180㎝、体重は79kg
このようにMLBのイチロー選手は細くてスマートなイメージですが、水泳選手と比較すると決してきゃしゃではなくしっかりとした体形の持ち主です。
女性選手で見てみれば背泳ぎのオリンピックメダリスト寺川綾選手が肩幅は目立つのではないでしょうか
寺川綾選手の身長は174㎝、体重60kg
最近の女性選手でいえば池江璃花子選手です。彼女は闘病生活から復帰して活躍中です。
池江璃花子選手の身長は171㎝、体重は57kg
では、女性トップアスリートでは水泳以外でスケートの小平奈緒選手の活躍が目覚ましいです。
小平奈緒選手の身長は165㎝、体重は60kg
ここに列挙した国際大会で活躍する水泳のトップアスリートを見てみると男性も女性も他の陸上スポーツにおけるトップアスリートと比較してどんな印象をもたれるでしょうか、なんと華奢な、なんとスマートな体形かと驚かれると思います。
1-2. 水泳選手のシルエットの特徴

水泳選手の特徴は小さいお尻に細い下肢が特徴です。これは陸上運動と違って重力運動とはまるで違って水の中を水平に前進するというある意味、非重力運動とも言えるかもしれません。その重量に逆らう筋肉の発達がまるで違います。

それだけ水泳選手のシルエットは極端に逆三角形が顕著に見えるのかもしれません。
2. なぜ肩幅が広くなる(大きくなる)のか具体的理由

水泳は基本的に全身運動であることから上半身、下半身の全ての筋肉をバランスよく使って泳ぐ運動です。
推進力を生み出すために上腕は当然ながら、下半身ではキックによる浮力と推進力を生み出すため船のスクリューに匹敵する力が必要です。それに加えて上体を常に水平に保つ体幹部の強い筋力が必要です。
ではなぜ肩幅が広くなるのか見ていきましょう。
2-1. 水を捉えて・かいて・後方へ押しやる
水泳選手の意識として手のかき(プル)と足のキックと比較すると平泳ぎは少し特殊ですが基本的な推進力はキックです。したがって練習の多くをキック練習に費やします。
そしてキックで生じる推進力を邪魔しないより大きなパワーをプルでさらなる推進力を得ます。
プルの動きを少し説明しますと、クロールをイメージして欲しいのですが、まず腕の入水時ですが、意識はより遠くの水をキャッチするポイントを強く意識するのです。
例えば壁とクローゼットの隙間の奥に入ってしまった1万円札を取ろうとイメージしてください。いかがですが、腕だけを伸ばすのではなく肩甲骨までも前に伸ばして1cmでも前に腕を伸ばそうとするでしょう。まさにそんなイメージです。
すなわち、入水は腕だけでなく肩甲骨を前方へ伸ばすのですその肩甲骨の伸ばしで10㎝近く違ってきます。この肩甲骨を前に伸ばすには肩甲骨周辺の筋肉、特に肩周辺のインナーマッスルが活躍するでしょう。
入水後、5本の指全てに爪の先まで集中して水の最大のキャッチポイントを探します。これをスカーリングと言いますがその捉えた水を素早くキャッチして身体の近いラインにプルしてきます。この時すなわちキャッチからプルのタイミングで肩周辺の筋肉、胸の筋肉、背中の広背筋周辺の筋肉が総動員する動きとなるのです。
そして最後にプルした水を後方へ素早く押しやるのです。そして腕は水から上がってリカバリーとなり、もう一方の腕は一連のプルの動きを始めるのです。
これらのストロークを選手が繊細にイメージして集中しているのです。より遠くの水をキャッチして腕のリーチの長さ分水をかく動作で推進力を得るのです。その支点となる肩のダメージは相当なものなのです。
ボートのオールは長ければいいというものではありません。オールをかくパワーとのバランスの問題です。
水泳の場合、リーチの長い人が有利とされていますが、より肩に与えるダメージも大きくなるので上手く肘を使って肩に与える負担を少なくして最大のパワーを得るための試行錯誤が水泳選手の課題となるわけです。
2-2. 肩を回す頻度
入水、キャッチ・プル・プッシュ、フィニッシュ・リカバリーを繰り返す水泳のストロークはまるで機械のように連続回転を行います。時によっては摩耗して痛みを発し、油を差す必要もあるでしょう。またしばらく休息してメンテナンスをする必要があります。
水泳選手の誰もが抱えるトラブルは肩関節・肩周辺の筋肉疲労です。
練習ではさらに負荷をかけるためにプル板という手のひらより大きなグローブのような板を手に装着してり、足の動きを停止させてプルだけで泳ぐためにビート板やブルブイを両足に挟んでプルだけでストロークをする練習をします。
2-3. 運動強度
以上のような水泳における大きな推進力の原動力となるストローク中の腕のかきにおける運動強度はスピードスケートの両膝の酷使に例えられるのではないでしょうか。またテニス選手のストロークに匹敵すると思います。
さて、この記事を読んで下さっている読者にとっての水泳は健康維持、運動不足解消などスピードを求めるモノではなく運動強度はさほど高くないと言えるでしょう。
でも、ビギナーががむしゃらにクロールで25mを泳ぐように無理なストロークはトップアスリートが抱えるリスクに匹敵する故障にも注意が必要だと申し上げておきたいと思います。
かといって、肩周辺の筋肉が大きくなっていかり肩の肩幅が異常に広く・大きなくなるという心配はまずないと言えるでしょう。
3. 一般水泳愛好家の肩幅

3-1. 水泳選手の肩幅に関する本音
水泳のトレーニングでより速い記録を目指すためにハードなスピード練習や筋トレはやむを得ないのですが、本音は筋肉はあまりつけたくないと思います。私も同様に立派で隆々とした筋肉は極力嫌っていました。
私は平泳ぎだったことから肩幅は泳ぎのスタイルからもろに抵抗を受ける肩をいかに水平から見た投影面積を小さくすることばかり意識していました。そしてその肩幅で抵抗を受ける時間を最小限にする工夫を徹底的に練習しました。
水泳選手にとって肩幅というのは結果であって出来うるならば肩に筋肉はついて欲しくないというのが本音なのです。
3-2. 一般的な水泳愛好家の肩幅
ごく一般にプールで水泳をエクササイズとして取り組んだり、ダイエット目的で泳いでいる程度では肩幅が目に見えて広くなる(大きくなる)ような事はありません。
それよりも二の腕のたるみが取れたり、肩こりが解消したり、姿勢が良くなって背が伸びた・・・など、素晴らしい効果に溢れています。
週に1度でもいいと思います。健康維持、体力維持もさることながら、リフレッシュ、ストレス解消、そんな内面効果も大きく、素晴らしい水泳です。肩幅のことなど心配せずに積極的にプールに通って欲しいと思います。
無理な水泳とは息が苦しくなっての25mまで我慢するとか、必死で肩を回してクロールをするなどです。
3-3. 無理は禁物
水泳はまずはキック練習、バタ足をやりましょう。上手に苦しくなく50mを泳げるようになるまではビート板を使うなどしてバタ足練習で距離を伸ばしましょう。肩を回すストロークはあくまでゆっくりソフトにです。これさえ注意すれば肩幅も肩の痛みなど、何の心配もありません。
ところで、肩幅の心配はないと言っても、水泳のストロークはクロールであれ平泳ぎであれ、日常と全く違う腕の動きをします。十分なストレッチと準備運動ウオーミングアップは忘れないようにしてください。
肩を回す特に肩甲骨を回すことを意識してやりましょう。そして肩のストレッチです。特にシニアの方々にはこのストレッチと肩回し運動は水泳だけでなく日常の生活の中でも取り入れられることをお勧めします。
4. まとめ
水泳をしていると肩幅が広く・大きくなって心配と感じていらっしゃる女性も多いかと思います。
この記事では、その理由はなぜなのかと言う視点で解説してきましたが、興味深く読んでいただけたでしょうか。
水泳選手のように記録を目指すわけでもなく、健康維持のためにもっとクロールが上手になりたい、運動不足解消に子供頃やっていた水泳をまた始めてみようかとお考えの読者の皆さまが水泳で肩幅が広くなるという心配はまずありえません。 30分、45分とクロールを休まず泳ぎ続けているシニアでも肩が大きくいかり肩になどになる心配はなく、よほどのスピード強化のインターバル練習をしない限り心配は無用と言って過言ではありません。 何らご心配なく水泳を楽しんで欲しいと思います。とはいえ、まだまだ水泳が楽しいというレベルまで達していないのかもしれませんが、水泳で肩こりが改善された、風邪を引きにくくなったなど、素晴らしい健康効果も期待できると思います。 心配される肩幅が広く・大きくなるほどの練習をすれば直ぐにでもマスターズ水泳大会にエントリーが可能です。
水泳は非日常な水の中で行う運動です。泳ぐだけでなく、ウオーキング、アクアダンスやエアロビクスなどエクササイズの一つとして水泳を捉えられて、あくまで楽しく愉快に取り組まれることを願っています。いつまでも健康で美しいシルエットを維持していただきたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
なお水泳に関して以下の記事も興味深い内容になっておりますのでご一読いただければ幸いです。
初稿:2019年3月28日
2稿:2020年1月7日
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。