水泳初心者にとって背泳ぎの泳ぎ方で以外と知られていない誤解があります。この誤解がなかなか上手に泳げない一因でもあります。
水泳を始めたばかりのビギナーから中上級者までの皆さん方がよく経験するインストラクターの指導やネット動画ではあまり伝えていない5つのコツを水泳歴60年の筆者が伝えていきます。
さあ、早速プールへ行って、ご自身で体験してみてみてください・・・
そして、クロールで25m泳げるようになったら果敢に背泳ぎにもトライしてみましょう。
目次
1. 水泳初心者向け背泳ぎの泳ぎ方
背泳ぎは水泳の4種類の一つでほとんどの人がクロールをマスターすると次に習うのが背泳ぎでしょう。
1-1. 背泳ぎとは
背泳ぎとはサバイバル泳法です。そして救助水泳です。
おぼれそうな子供がいて助ける時、救助する人は背泳ぎで自分の呼吸を確保、子供を仰向けに支えて岸まで泳がなければなりません。
この時、腕は使えません。足だけで推進力を得なければなりません。
バタ足もしくは平泳ぎの逆キック(はさみ足)が必要ですがはさみ足は古式泳法の一つで一般的ではありません。
また洋上で救助を待つ場合もライフジャケットがあったにせよ背泳ぎは一番疲労のない安全なサバイバル水泳です。
従って、生きていく限り、背泳ぎのできる能力はどうしても会得しておきたい泳ぎ方だと言えるでしょう。
背泳ぎの呼吸は自由という安心感は他の泳ぎ方とは比較になりません。ただ平泳ぎは顔を水面から上げて泳ぎますがこれはかなりの疲労を余儀なくされます。
1-2. 背泳ぎの誤解
私がビギナーにアドバイスする場合や水泳教室の子供たちに指導する場合、背泳ぎに関してはにいつもお伝えするするのですが
具体的な背泳ぎの泳ぎ方に入る前にだれでもが誤解していることがあります。
「背泳ぎとは身体のどこをかいていると思いますか?」
「それはもちろん、水面に仰向けになった状態で水の中、すなわち身体の外側(背中側)をかいている」
こんな風にイメージしていませんか・・・

水面に対して仰向けになっているのですから、身体の向きがクロールと真逆なのは当然です。
でも手のかく動きの軌跡は両肩を結ぶ延長線の内側(お腹側)をかいています。決して外側(背中側)をかいていません。
これが大きな誤解です。
次の動画をよく見て下さい。
背泳ぎの動きを進行方向から見た動画です。
身体の外・背中側になるのは手のかきのフィニッシュ、水の最後の押し出す時だけなのです。
いかがでしょうか、背泳ぎとは身体の内側をかいているのです。
言い方を変えればクロールと同じようにお腹側をかいているのです。
この誤解に気づき、この誤解が解けたら背泳ぎの泳ぎ方のイメージが一変します。
1-3. 誤解を解消して楽な背泳ぎ
背泳ぎの誤解を理解していただけたら次に
背泳ぎの場合、お腹側と背中側、どちらをかけば強い推進力が得られるか、そしてどちらが楽か?
いかがですか、背中側をかけば肩に余分な力が加わるうえに強い推進力を得ることができません。
お腹側をかく方がいかに楽で推進力が得られるかどうぞ今度プールに行かれたら試してみてください。
1-4. ローリングの謎
よく言われる背泳ぎのローリングがなぜ起こるのか?
誤解が解けたらローリングの謎が理解されたのではないでしょうか・・・
上級者になればなるほど、スピードを追求するために腕で大きな推進力を得るため、必然的にローリングさせて身体の内側を力強くかいているのです。
まだビギナーのうちには動画のような大きなローリングは必要ありません。
でもこの誤解というかイメージの違いを理解すると背泳ぎの上達が雲泥の差がでます。
2. 上手になるための5つのコツ

前章ではキック、プル、ストロークと背泳ぎの泳ぎ方を分解して解説しました。
イラスト動画のイメージが膨らんできたでしょうか、では前章の泳ぎ方と重複するところもありますが、背泳ぎの泳ぎ方のコツをお伝えします。
まず以下の動画を参考にしていただき背泳ぎのイメージを強く持って欲しいと思います。
2-1. 自然なローリング
水泳はどの泳法の泳ぎ方も体幹部がしっかりと軸を作りその基本線は進行方向にむかって水平である必要があります。
その基本となるのが頭の向きと位置です。
・基本軸を常に一手に維持するために視線は常に天井を見つめましょう。
身体がどんなローリングをしようと、視線が一定に保つことが大切です。水泳選手がおでこにペットボトルを置いて背泳ぎする映像さえ目にするほどです。
・リカバリーするときに肩と耳を合わすように肩を回して手の親指をみつめてリカバリーするイメージです。
そのようなリカバリーで自然なローリングが生まれます。
そして逆の腕はしっかりと水を捉えられるのです。
2-2. 腕はクロールのイメージ
背泳ぎでもクロールでも水泳は推進力が最も大切ですがその推進力は水を捉えて水を押しやるまでの距離が長い方が有利です。
したがって泳ぎ方としては、より遠くの水をキャッチしてより身体の遠くの方へプッシュしてやる必要があります。
そのもっともすぐれた泳ぎ方のプルはなんといってもクロールです。それに背泳ぎのプルは全くイメージできないと思います。
スカーリングをつかってS字にかくとか良く話題になりますが、タイムを競う水泳アスリートならそういう議論もあるでしょうが、初中級レベルで上手に泳ぐためには不要だと思います。
ともかく背泳ぎの泳ぎ方でプル(腕のかき)はクロールとイメージを作ることが最大のコツだと私は考えています。
クロールは顔側にお腹側に水がありますが、背泳ぎは後頭部、背中側に水があるだけの違いで泳ぎ方すなわち手のかきは同じなのです。
こう考えれば背泳ぎのイメージが一変すると思います。
より遠くの水をキャッチして身体付近までプルして、お尻の下のより遠くまで水をプッシュする。
そのために水をまっすぐな軌道で腕を動かす。
そして上級者になればその泳ぎ方も手首を手のひらをうまく使ってスカーリングでより推進力を得る必要があります。
2-3. 利き足のダウンキック
強い浮力と推進力をえるためにキックが大切ですが、背泳ぎの場合、キック全てに全力を注ぐというのは全体の泳ぎ方としてはコンビネーションからは非常に困難です。
ましてもっと上手になりたいと練習している人にとっては意識しやすいコツがどうしても必要です。
キックのリズムは人によって差があります。1ストロークを4ビート、6ビート、変形など様々です。
でも一番、力が入る利き足のダウンキックに意識するといいと思います。
私の背泳ぎの泳ぎ方では4ビートでそのうち右のダウンキック1回に強い意識でキックします。そしてリズムとタイミングをとっています。
そしてその1回の強いダウンキックがその他3回のキックも十分な推進力が得られます。
私は水泳の4種目の中でも背泳ぎは苦手種目ですからより一層、利き足のダウンキックを意識しています。
力強いキックは鞭のようにしなるキックなのですが、そのコツは足がお腹についている感覚というか腰を支点にしてキックするというよりはお腹を支点にキックを打つイメージです。
もっと違った表現をすれば足が30㎝も長くなったイメージで腹筋でキックをするようなイメージです。
2-4. 呼吸のタイミング
背泳ぎの泳ぎ方では常に顔が水面上にあるために呼吸は簡単なのですが、この呼吸もクロールと同じに私はイメージしています。
私のクロールは右利きですから、右のプッシュで息を吐き切り、そして右のリカバリー中に息を吸います。
従って背泳ぎも右手のプッシュで息を吐き切り、右手のリカバリー中に息を吸います。
この呼吸をお勧めします。
いつでも呼吸ができるとはいえ、同じ呼吸リズムが背泳ぎの泳ぎ方においても安定した泳ぎが出来ると思います。
2-5. ゆっくりなストローク
背泳ぎで上手に見えて、安定した背泳ぎの泳ぎ方のためにストロークはできるだけゆっくりとしたリズムで泳ぎましょう。
特に意識するのはリカバリーをよりゆっくりとイメージするのが効果的です。
真っ直ぐ伸びた腕、出来るだけ遠くに入水する。一番プールの天井を通過する手の親指を凝視してゆっくり肩を回す。
背泳ぎは腕を回すのではなく、肩を、いや肩甲骨を回すイメージでゆっくりとしたストロークを目指しましょう。
3. パート別解説

では基本的な背泳ぎの泳ぎ方について解説しましょう。
3-1. キック
まず水泳練習でどんな泳ぎでも一番大切にしたいのがキック練習だと思っています。これは背泳ぎも同じです。
足を交互に力いっぱい蹴り下げます。この強い蹴り下げの反作用で蹴り上げが行われて推進力が得られます。
足の甲でしっかりと蹴り上げて水を後方遠くに押しやると誰でもが思いますが、強い蹴り上げキックのためには深くて強い蹴り下げを是非練習して欲しいと思います。
上の動画では両手を1回ストロークする間に足のキックが両足2回ずつの4ビートのリズムに見えます。
足の回転数が早く足の蹴り下げが浅く回転数を上げています。さらに回転数をあげて6ビートにしてスピードアップする水泳者もいることでしょう。
今はこの動画でイメージだけを頭の記憶にとどめておきましょう。
でもビギナーには腕を使わずに足の練習だけに分けて泳ぎ方の練習をしましょう。
まずビート板を胸にだき抱えてプールの壁を蹴って仰向けでプールの天井を見ながらのバタ足からやってみましょう。
胸にビート板を抱いていますから浮力十分です。バタ足の推進力を体験しましょう。
先ほど言ったように強く足を水の深いところまで蹴り込んで、その反作用を使って蹴り上げます。
呼吸は口から息を吸って口から出す口呼吸です。
バタバタと足を動かせるバタ足キック、ゆっくりとしっかりと蹴り下げ蹴り上げるキックを試してみましょう。
このキック練習でどんなキックが一番楽で一番進むかを体感して現時点でのベストキックを探しましょう。
・第2には腕を動かさなくても足だけで推進力が得られればフォームが安定すると同時に大きな抵抗となるお尻が下がるという姿勢を防ぐためからです。
どうしても背泳ぎの泳ぎ方は腕重視で練習すると思いますがベースにあるのはキックだと私は常々感じています。
最初は25mもいけないかもしれませんが、少しずつ距離を伸ばして目標を25m、25m+α、50mと頑張ってみましょう。
3-2. 腕の使い方
では次の泳ぎ方の段階は腕の使い方ですが、水泳指導者によってはいろいろな指導の方法があって指導者個人のこだわりや信念があって一概には言えませんが、
背泳ぎの腕の使い方について私の泳ぎ方をお話しします。
プルブイを足の付け根(股)に挟んで仰向きでプールの壁を蹴ります。
その時、両手で両耳を挟むようにまっすぐ前に出して手と手を絡めるようにして背面でスタートします。肩が固ければ両手の指を絡めるなどして前進します。
・右手の手の平で水を感じて水をキャッチ(捉えます)。 ・そして身体を少し右にローリングして手のひらをそのまままっすぐに右のお尻の下まで水をかきましょう。
この水のかきはゆっくり過ぎても水を逃がしてしまいます。また速すぎる動きもまたコントロールするのが難しいですが、まっすぐかきましょう。
まっすぐかくとはクロールにおけるプルをイメージしてかきましょう。
先ほどの背泳ぎのイラスト動画では手の複雑が動きが理解できないと思いますが、仰向きになってクロールをするイメージです。
この自分自身のクロールのイメージと背泳ぎの動画のイメージが合致しないと思いますが、もっと言えば仰向けになった状態から右45度にローリング傾いた状態でクロールの右手の腕のかきをするイメージです。
ゆっくりと水を捉えて右手側のお尻の後方まで水を押しやるようにフィニッシュしましょう。
次に手の親指から腕を水から抜きあげるイメージで腕をプールの天井真上を通過して耳の後ろへリカバリー水面を叩くようなイメージでパチンと手の甲で音がでるような感じです。しっかりと肩をまわしましょう。
ここで右手のストロークが完了です。左手と合体します。
右手が完了したらそのままそのまま休憩です。
では同じストロークを左手で右手と同じ腕の動きで一連のストロークを完成させ親指からリカバリーをして休憩している右手と合体です。
これで1ストロークが完了しました。
3-3. 手と足のコンビネーション
背泳ぎの泳ぎ方練習としてまず、キックと腕との個別練習の説明をしましたが、次の動画にあるような泳ぎ方一連のストロークに入りましょう。
プルブイは股の挟んだままにしましょう。
足を動かすとあまり大きな動きができませんが、プルブイの浮力が補助してくれますから安心です。
コンビネーションで意識するのは
・リカバリーの軌道は耳に触れるように手の甲でパチンと水を叩くイメージです。
もっとイメージを膨らませると右肩が右耳にくっつくような感じで右手の親指から水から抜きます。
そうすると左肩が下がって左にローリングが始まり、左手のストロークが始まります。
この左へのローリングが始まっても頭の位置は天井をしっかり見つめ右手の親指を見つめています。
自分の視野から右手が消えるころ左のストロークが腰あたりの水を捉えている頃でしょう。
リカバリーが終了するときのイメージですが手の甲をパチンと音を出す表現しました。
それはパチンと音をたててより先の水をキャッチするために手を遠くに伸ばす意味が隠されています。
この一瞬の間により遠くへ入水できるように強く意識しましょう。これは上級者になればもっとより遠くを意識することが重要です
4. まとめ
背泳ぎの泳ぎ方について陥りがちなイメージの違いによる誤解を解説する事で背泳ぎを上手に泳ぐコツを解説してきました。お楽しみいただけたでしょうか!
背泳ぎの特徴は泳ぎ方が陸上で行く運動ではないだけに、目に見える感覚と実際に泳ぐ意識と大きく違うことです。 初心者に見られる大きな間違いは腕のかきが両肩を結ぶ線より下をかいているためぎこちなく、力が入らず、苦労する羽目に陥ってしまいます。
いかがですか、ここまで読んでこられた貴方には、背泳ぎの泳ぎ方のイメージが大きく変わったのではないでしょうか・・・
背泳ぎの上手な人は皆共通にまっすぐな伸びた腕、指の先までしっかり伸びています。そしてその真っ直ぐなまま入水して、本当に優雅に美しく見えます。
どうぞ、そんな優雅な背泳ぎを是非マスターされるように願っています。
最後まで読んでいただき心から感謝しています。ありがとうございました。
なお以下にある背泳ぎ以外の泳ぎ方についての記事も是非ご一読されることをお勧めします。
初稿:2019年1月20日
2稿:2019年9月28日
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。