水泳競技のメドレー種目には個人種目とリレー種目があります。
そして、このメドレー競技は水泳選手にとって憧れのレースです。
日本選手では男子の瀬戸大也選手に萩野公介選手、女子では東京五輪で2冠快挙の大橋悠依選手と世界で活躍する選手が活躍しています。
この記事を読まれれば、メドレー競技への興味がより一層高まることと思います。どうぞ経験の浅いスイマーも果敢にトライしてみましょう。
目次
1.【水泳のメドレー種目】泳ぐ順番の謎!
全世界の水泳選手のあこがれ!そしてアメリカが誇る偉大な水泳選手といえば
「水の怪物」の異名を持つマイケル・F・フェルプス選手・・・
彼は2013年に当時「水の超人」と叫ばれたオーストラリアのイアン・ソープ選手に代わり世界の頂点に君臨しました。
マイケル・フェルプスがもっとも得意とした200mバタフライで2001年に男子競泳史上最年少の15歳で世界新記録を更新しました。
以降自由形、バタフライ、個人メドレーと数々の世界新記録を樹立し、オリンピック、世界選手権と長い間、覇権を維持した選手です。
そして時代は流れ、和製フェルプスとして登場した瀬戸大也選手や萩野公介選手が世界に名乗りを上げきました。
そして女子では大橋悠依選手が東京五輪2020で200m・400mの2冠を達成しも世界の頂点に君臨しました。
これら水泳選手なら誰もが目標とするオールラウンドスイマーの証である個人メドレーが今、日本においても注目されています。
そしてこの種目で世界の頂点を目指す上記選手達は4つの種目どのスタイルにおいてもトップスイマーとしての実力を有します。
このように注目されているメドレーですがメドレーの順番はどのような理由で決まったのでしょう、その理由について考えていくことにしましょう。
水泳のルール上はどうなっているのか、まずその点から述べていきましょう。
1-1. 個人メドレーのルール
(財)日本水泳連盟、競泳競技規則において以下のように定められています。
もちろん、この規則は国際水泳連盟(FINA )の規則に則り定められています。
個人メドレーは定められた距離を次の順序によって、それぞれの泳法の規則に従って泳ぎ、かつゴールしなければならない。
⑴バタフライ、⑵背泳ぎ、⑶平泳ぎ、⑷自由形
各泳法は、定められた距離の4分の1ずつを占めなければならず、自由形は⑴⑵⑶の泳法で泳いだ時は違反となる。
ルール上このように定義されています。
ルールで特出すべきは自由形はバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎで泳いだ時は違反となります。
ターンして壁を蹴ってからは次の種目のルールが適用されます。
1-2. メドレーリレーのルール
メドレーリレーは、定められた距離を次の順序によって、それぞれの泳法の規則に従って泳ぎ、かつゴールし、継泳しなければならない。
⑴背泳ぎ、⑵平泳ぎ、⑶バタフライ、⑷自由形
ただし自由形は⑴⑵⑶の泳法で泳いだ時は違反となる。
以上のとおり、メドレーの順番は個人メドレーとメドレーリレーと明確にルールで定められているために、順番を自由に代えるのはできないのですが、どうしてこの順番となったのかその理由は、過去の変遷があるかもしれません。
さて、私が個人メドレーで自分のベスト記録を出そうとするとやはりルールに則ったバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順番で泳ぐでしょう。
もし違う順序で泳いだとすればベストの記録は望めないような気がします。
そしてこのルールがある以上、この順番を戦略的に攻略していい記録を目指したいところです。
ではこの順番に至る理由を考えてみましょう。
2. 個人・リレー種目毎に順番の理由

では個人種目の個人メドレーから理由を考えてみましょう。
それを考える上で、もし私自身ががメドレーを泳ぐとすればどのように順番を考えるかを述べてみようと思います。
2-1. 個人メドレー
個人メドレーの選手であっても得意、苦手な種目があるわけで、当然ながら苦手を先に泳ぐか得意なスタイルを先に泳ぐかは個人の好き嫌い、また戦略に対する各人の思惑や考え方があると思います。
私は平泳ぎが専門ですから平泳ぎにはそれなりの自信があります。でもその他のスタイルは頑張りさえすれば良いタイムが出ると考えています。
ところが平泳ぎだけは頑張れば良いタイムが出るとは限りません。タイミングとペース色々が条件がありとても難しい平泳ぎなのです。
2-1-1. スタートの1番目の泳ぎ
私は一番辛い泳法を最初に片付けて、それなりの調子を上げていきたいと考えます。したがってスタートの泳法は迷わずバタフライです。
また、最初にメドレーリレーと同様に背泳ぎだとすればトータルの記録を考えれば最初に飛び込みスタートができなければそれだけでタイムロスとなりますから最初の泳法に背泳ぎはありえません。
2-1-2. 2番目の泳ぎ
スタートの種目がバタフライだとすれば、仰向けで泳ぐ背泳ぎは次に片付けたいと考えます。
平泳ぎ・自由形を先に泳ぐと考えるのはその後の泳ぎのタイミングとペースアップに関してから言っても私なら2番目の泳法は背泳ぎがいいですね。
それに背泳ぎはある程度のスピードがありタイムを上げるチャンスがあります。
バタフライで得たスピード感を維持できると考えます。
2-1-3. 3番目の泳ぎ
3番目の泳法を考える前にラストの4番目はラストスパートをかけるもっとも優れた泳ぎとしては誰もが自由形(クロール)と考えるでしょう。
その考え方から3番目は平泳ぎとなります。
そして私のように平泳ぎが得意な選手はこの平泳ぎで他者との距離を狭める、追いつく、引き離すなどの戦略が生まれます。また、この平泳ぎの泳ぎがトータルの記録に大きな影響を与えます。
バタフライ、背泳ぎと泳いだ後の平泳ぎはウオーミングアップも十分、力が入りすぎて力むということもありません。力一杯平泳ぎに集中できます。
平泳ぎが苦手な選手もなんとか早くラストの自由形にスイッチしたいところです。
このようなイメージからも3番目の泳法は平泳ぎが好ましいと思います。
2-1-4. 4番目ラストの泳ぎ
これはもうどんなタイプの水泳選手でも同じ答えで自由形と答えるでしょう。
自由形はいわゆるクロールです。そのほかの3泳法のうちのスタイルで泳ぐ事はできません。
そしてラストスパートをかけるにはうってつけと言えるでしょう。
2-2. メドレーリレー
次にメドレーリレーを考えてみましょう。
メドレーリレーは各チーム対抗のリレーゲームです。オリンピックや世界選手権では国別対抗ですから当然ながら最高の盛り上がりでその日のビッグイベントとなります。
したがって4種目のその日の選手の調子にもよりますが、各チームとも4種目それぞれにベストな選手がエントリーされます。
ですからこのメドレーリレーの見どころを考えれば各チームごとに4種目を自由な順序ではイベント性が大きく後退するでしょう。
やはりリレーの順番は同じ種目でルール化して泳ぐ選手にも観客の立場にたってももっともエキサイティングな順序というのが望まれるところです。
ではどんな順番が一番合理的でしょう。
2-2-1. スタートの最初の泳ぎ
4つのうち飛び込めない種目はただ一つ背泳ぎです。
したがって背泳ぎはリレーできないスタイルであるためスタート第1泳者は当然ながら背泳ぎになるでしょう。
2-2-2. 2番目の泳ぎ
2番目を考える前にリレーですからイベント性を効果的に考えれば遅いスタイルから速いスタイル、そしてラストは一番速いスタイルにするのが面白いと私は考えますが、いかがでしょうか・・・
その考えからすれば2番目は平泳ぎ、3番目にはバタフライ、4番目のラストは自由形という順序になってくると思います。
また背泳ぎの次にの2番目にはテクニック種目の平泳ぎを持ってくるのが見どころ十分という理由もあるかもしれません。
2-2-3. 3番目の泳ぎ
3番目も個人メドレー同様にラストの4番目をクロールとなれば自動的にバタフライとなるでしょう。
そして先ほども述べたようにバタフライのスピードも見どころとしては面白いでしょう。
2-2-4. 4番目ラストの泳ぎ
個人種目のメドレーと同様に自由形(クロール)ということになるでしょう。
最後の自由形には各チームとの一番速い選手が泳ぎ、リレーの花を飾ります。
3. 水泳選手にとってベストな順番

前章で筆者の私が選手の立場と観客の立場に立った面白さから水泳のルールで定められているメドレーの順番を考えてみました。
前章でも述べましが選手の立場からもこの順番は納得のいくところだと思います。
ここでは、選手が考える順番をもう少し掘り下げてみていきましょう。
3-1. 個人メドレー
個人メドレーをエントリーする選手は多く分けて3タイプあると思います。
3-1-1. バタフライが得意な選手
バタフライが得意な選手が、個人メドレーを制している場合がとても多いと思います。
冒頭に述べたフェルプス選手も瀬戸大也選手も萩野公介選手も大橋悠依選手もこのタイプです。
バタフライが得意ということで短距離のスプリントもスタミナもしっかりと備わっており、バタフライも自由形も個人メドレーも一人で何種目もエントリーが可能なマルチ選手です。
彼らは最初に大好きなバタフライで飛び出したいと考えるでしょう。もしくは得意なバタフライで軽くパワーとエネルギーを温存しておこうと考えるかもしれません。
どちらの考えも戦略的、また自己ベスト更新のレースプランとして最初の泳ぎはバタフライと考えると思います。
では2番目以降はやはり前章で述べたような理由による順番がいいと考えると思います。
3-1-2. 平泳ぎが得意な選手
次に平泳ぎが得意な選手も個人メドレーによくエントリーします。実は私もこのタイプです。
日本代表では女子の渡辺香生子選手がいます。
理由は平泳ぎがとても辛い種目で練習も非常に過酷だから個人メドレーが大好きなのです。
その上、平泳ぎは力が入りすぎると失速する原因となり、またパワーを生み出す回転数を上げればそれに比例してスピードが出るものではないからです。
それでいて苦しい練習を積んでいますからスタミナは十分過ぎるほどしっかりしています。
個人メドレーをしっかり泳ぎ切るにふさわしいタイプです。
彼らにとって最初の種目として何が一番かというと、バタフライだと言うでしょう。
その理由は自分の専門種目は平泳ぎなのですが、大好きなのはバタフライなのです。
ですから最初に好きなバタフライで身体をほぐし、できるなら他者を抜いておきたい!
そして平泳ぎは3番目で爆発させてトップを狙い、最後の自由形で勝負をかけたいと思うでしょう。
3-1-3. オールラウンドの選手
次のタイプは4つのスタイルともそれぞれ遜色がなる、常時4つのスタイルを練習しているタイプです。
彼らはどんな種目という考え方はしないと思うのですが、やはり1番目はバタフライ、ラスト4番目は自由形と考えるでしょう。
3-2. メドレーリレー
メドレーリレーは各スタイルのエキスパートの4人ですからそれぞれがベストを尽くすという点で順番について考えることはないと思います。
メドレーリレーとはいうものの自分の個人レースの意味も含まれており、他の種目の選手とは少し精神状態は違うと思います。
次にリレーのタイミング、フライングがあってはなりません。またゴールタッチと足が離れるタイミングが同時になるようにリレーの引き継ぎを徹底的に練習をします。
もう1ストロークくるか、そのまま手を伸ばすかのタイミングは選手同士の阿吽の呼吸によるチームワーク、この妙味がまた面白いです。
このような感じてメドレーリレー選手がメドレーの順番を意識するなどといった感情はきっと持たないと思います。

従ってルール上の順番もきっと私と同意見だったと思います。
3-3. メドレーリレーの楽しさ
メドレーリレーの楽しさは水泳競技の花ですね。
フリーリレーのスピード感あふれるリレー競技に引けを取らない面白さは格別です。
各チームとも4スタイルの泳ぎで同じ順番にタイムを競う面白さは格別です。
3-3-1. 背泳ぎの記録は公認記録として認定
メドレーリレーの第1泳者である背泳ぎ泳者はスタートからゴールまでは完全な背泳ぎレースですからその記録で世界記録を目指すことができ背泳ぎ選手はメドレーにエントリーされれば記録更新のチャンスが膨らみます。
チームとしての貢献度もさることながら、背泳ぎ決勝の雪辱を晴らすためにもメドレーリレーの背泳ぎは見どころ満載なのです。
3-3-2. 引き継ぎの妙味
背泳ぎから平泳ぎのリレー、また平泳ぎからバタフライ、バタフライから自由形のリレーとどの引き継ぎを見てもスタイルの違うゴールタッチと引き継ぎに要するタイムロス、このタイミングは実に面白いです。
テレビ観戦ではあまりその引き継ぎは目に見えませんが、2020東京オリンピックでは4K8K方式での放送が行われるでしょうからそのあたりの引き継ぎシーンをカメラで是非追って欲しいと思っています。
すなわちゴールタッチ前に次の泳者のスタートの足が離れるのが早ければ失格となります。正確な引き継ぎは行われていないという理由なのです。

理由は目視審判では水しぶきで水中での手のゴールタッチがよく見えないため、ほんの少しでも引き継ぎを速めたいとの理由から水しぶきをよく飛ばしたものです。
でも今は全てデジタルで判定されますから確実性が問われます。
3-3-3. 泳ぐ順番でより一層加熱するスピード感
第2泳者から最後の泳者まで泳法ごとに徐々にスピードが速くなっていきますからそのスピード感と成績順番の行方の興奮は増してゆき、ラストの第4泳者においてはピークに達します。
このイベント性は実に面白く観戦している人にはたまらないエンターテイメントであるわけです。
4. まとめ
水泳競技におけるメドレー種目、個人メドレーとメドレーリレーの泳法スタイルの順番については違いがあります。
理由はどこにあるのかという疑問があるのも当然です。
この順番については競泳競技規則によって定められているため考える余地のないところですが、長年水泳に携わってきた者にとってはそれはドラマがあり選手として頑張っていた頃を思い出します。

定められた順番があるからこそ個人メドレーは記録が更新され受け継がれていくのだと思います。
そしてメドレーリレーにあっても水泳競技大会の花形種目、ラストを飾る種目にふさわしいメインイベントです。
そのイベント性は興奮を競技会場全体に及ぼします。
それもルールに定められた種目の順番があるからだと私は思えます。
これからの水泳競技がテレビ放送などでご覧になる場合には是非この順番を意識してご覧になるとさらに面白さが拡大すると思います。
そしてこれから練習を重ねる選手にあってはこの順番に趣旨や理由をよく噛み締めてもらえれば、さらなるモチベーションの維持向上につながると思います。
以上最後までお付き合いいただき心から感謝しています。ありがとうございました。
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。