水泳競技4種目のターンで浮き上がりまでのタイミングがとても難しい平泳ぎ!この種目を練習している人には悩みの種だと思います。
特に水泳競技会を目指すシニアスイマにとっては平泳ぎのターンいかんが記録に大きく影響し、場合によっては失格になるケースもあります。
どうすれば壁を蹴った初速を失わずに浮き上がり、いち早くトップスピードにもっていけるか? 読者のスイマーに少しでもお役に立つキーポイント(タイミングの取り方、いち早くスピードに乗っていける方法そして効果的な練習方法やコツに)ついて詳しく解説していきたいと思います。
私自身平泳ぎを専門とするシニアスイマーとしてターンについては過去幾度となくルール改正もあり悩み続けてきました。そして私なりにポリシーを持っています。その全てを述べていきたいと思います。
どうぞ今後の練習に生かしていただければ嬉しいです。
1. 平泳ぎのターンテクニック
では両手をタッチしていかに素早くターンをするかが記録成績に大きく影響することは明らかなのです。水泳競技会で記録を目指す水泳選手にとってターン練習は欠かせません。
1-1. ターン前5mライン
何と言ってもターンで一番重要なのは壁を蹴る力を最大にする必要があります。ターン前5mラインを過ぎるときの自分の平泳ぎのストロークがどの状態なのか、腕を伸ばしているのか腕をかき込んだ状態なのかです。
その状態を確認したら壁をタッチするときのイメージにふさわしいようにストロークを調整する必要があります。
そしてターンで最も効率的なタッチを迎えれば素早くターン動作に入り壁を蹴る力のタメが最大になるように心がけましょう。
ターンタッチ寸前でもう一かきをしていたのではタイムロスにつながります。また壁を蹴る力も分散することになります。
1-2. ターンタッチと足の引き寄せ
ターンタッチは両手で行う必要があります。そしてターンする壁は記録計測のタッチ板があるために通常練習プールのように壁のエッジを握ってターンをすることができません。
ですから、一瞬でも壁に対する力がゼロになってしまえば手は滑ってターンができません。日常プールでターンするときにもエッジを握ってターンをすることはさけ、エッジを握らず手のひらでタッチターンができるように練習してください。
水泳競技会の時の計時用タッチ板は少し抵抗のある板ですから滑りにくいのですがよく練習を重ねて滑らないようにしましょう。
そして足の引き寄せを同時に行います。手で壁のエッジをつかんで足を引き寄せるという方法では素早いターンはできません。
垂直壁面を両手でタッチターンして同時に素早く足の引き寄せが必要となります。
そのためにはタッチ寸前の推進力を上手に利用してタッチターンと足を引き寄せる必要があります。
そして壁を蹴る力がマックスになるように方向転換タイミングのセルフイメージを確立しましょう。
1-3. 蹴伸び姿勢(ストリームライン)
水泳における蹴伸びは姿勢はストロークにおいても重要な姿勢ですから、こと平泳ぎに関してはストローク、スタート、ターンいずれの動作にも抵抗の少なく最大スピードが得られる姿勢ですから、陸上においてもこの姿勢を意識して生活習慣そのものから正しい姿勢を維持するようにしましょう。
1-4. ドルフィンキック
平泳ぎにおけるスタート、ターンにおいてドルフィンキックを1回使うことが許されています。
でも私はこのドルフィンキックが認められていない時代を経験しています。このルールの時には自分ではドルフィンキックを使った意識がなくても審判員の目には使っていると見られて失格になった経験もあります。
その後、水中で一かき動作中に1回のドルフィンキックが認められ、さらに直近ではドルフィンキックは認められつつさらに水中一かき目の動作中という以前の但し書きが削除されドルフィンキックのタイミングは許容範囲が大きく広がりより一層選手に有利になっています。
私は日々の水泳練習でドルフィンキックの練習は欠かしません。平泳ぎキックの練習と同じくらいドルフィンキックの練習をしています。
1-5. 一かき一蹴り
平泳ぎで許されているスタートとターンの水中動作中における一かき一蹴りはとても大切です。
私の場合はドルフィンキックの力を最大限にするため、最初の一かきに入る動作の瞬発力をドルフィンキックの蹴り始めで得ています。そしてドルフィンキックの推進力と一かきの推進力が同時になるようなイメージです。
そして水中での一蹴りの足を引き寄せ中に膝あたりにある腕をうまく抵抗なく胸の位置までまとめた上で一蹴りと同時に蹴伸び姿勢に入るというイメージです。
この過程において上手な人は見事なほどスムースに失速することなく浮き上がり平泳ぎのストロークに入っていきます。
1-6. タイミング
このタイミングは全ての水泳において重要なことであり、平泳ぎのターン中における動作のタイミングも同様にとても大切です。
壁を蹴ってどのタイミングで一かき一蹴りを入れるのか、そして前述のドルフィンキックのタイミング、浮き上がってストロークに入るタイミング、こうしたタイミングは平泳ぎの場合知恵の出しどころです。
それから高度になりますが、例えば体調が良くないとか、精神的に負担を感じているなどネガティブな状況とまた調子が良い時とその原因がタイミングにあることがしばしばあります。
ネガティブな状態にある時には少しタイミングを変えてやるなどの調整も必要なケースが多々ありますから頭の片隅に置いていてください。
1-7. 平泳以外のターンテクニック
2. 平泳ターン4つの重要な練習のコツ
前章で平泳ぎのターンテクニックを分解してお話ししてきましたが、この動作テクニックは断片的に行っているのではなく、一連のスムーズで滑らかな動きによってなされるべきものです。
従って、ターン練習はできるだけターン前のトップスピードからターン、水中姿勢、浮き上がってからのトップスピードまでと言ったイメージで平泳ぎの練習は時間と距離が必要です。
従って日々のウオーミングアップからクールダウンまでのすべての練習中において常に平泳ぎターンの練習をイメージしてターンテクニックを向上させましょう。
そして私自身が行なってきて、今も続けている練習のコツベスト4を紹介したいと思います。
2-1. キック練習にビート板は使わない
私の水泳の練習方法の一部なのですが、平泳ぎのキック練習にビート板は使いません。
言い換えればキック練習においてもターン練習が十分できるということです。
キック練習ですから腕は使わずキックを強化するための練習バリエーションなのですが、ターン中のキックはとても大切な練習ですからビート板と使うというのは合理的ではないと私は考えています。
勿論これは私の持論であって押し付けではありません。このコツを頭の片隅に置いていただければ幸いです。
2-2. 練習中の一かき一蹴りは必須
平泳ぎで認めてられているスタート・ターン中における一かき一蹴りですが、これが結構辛いです。ですから練習中に私も時々ターン中の一かき一蹴りを省略する誘惑に駆られます。
読者の皆さんはいかがでしょうか。でも平泳ぎの一かき一蹴りは必須です。
そして呼吸は止めずにしっかりと吐きながら力強く浮き上がってこれるように練習をしましょう。この練習の成果はターンテクニックの向上と心肺能力、スタミナの向上に必ず良い結果を生みます。
2-3. ターン中両足の引き寄せ
素早いターンを実現するためのコツは両足の素早い引付けです。両手がタッチした時点ではスピードはゼロとなりました。速やかに折り返しターンを終了するために自由形ではとんぼ返りで折り返す反面、平泳ぎはどうすれば素早く折り返しができるかは足の引き寄せしかありません。
この両足の引き寄せは前章と繰り返しになりますが、この素早い引付には腹筋を意識的に力をいれて引き寄せます。
この動作を意識するかしないかで大きなな差が出ます。壁に両手がタッチして上体は折り返しますが両足はターンまでの速度で壁に近づきますから無意識のうちに両足も引き寄せられます。
この引き寄せはプールサイドを握って両足の引き寄せを練習することができ、会得できれば平泳ぎのタッチターンで上手く活用できます。
2-4. ドルフィンキックの重要性
前章でも述べましたが平泳ぎのスタートターンには欠かせないドルフィンキックです。そして水泳の練習においてこのドルフィンキックはオールマイティですべての種目の基本にもなるテクニックだと思います。
バタフライの練習はストロークと勘違いなさっているのでは私は思います。
バタフライの練習であっても一番多くの練習を割くべきはドルフィンキックの練習だと私は考えます。
そしてこのドルフィンキックはバタフライに限らずクロール背泳ぎにおいてはスタート・ターンの浮き上がりにとても大切な推進力です。そして平泳ぎについてもたった1回のドルフィンしか認められていませんが、その1回がとても大切です。
したがって平泳ぎが専門のスイマーであってもこのドルフィンキックの練習はとても重要です。いかに効果的にドルフィンキックを使えばいいのかです。
クロール・背泳ぎ・バタフライでは全身のうねりを使ってドルフィンを打つことができますが、平泳ぎの場合には水中でのうねりは一かき一蹴りのタイミングと合わない気がします。それは私の見解なのですが、うねりよりも一かき動作によりドルフィンキックを打つのが私にはベストなのです。
それにうねりを使ってドルフィンはその後の平泳ぎのストロークに悪影響を及ぼすような気がします。
3. 平泳ぎターンのルール
ではここで水泳競技、平泳ぎのターン中に心がけねばならいルールをおさらいしておきたいと思います。
3-1. スタート・ターン
スタート、及び折り返し後には水没状態でのひとかき・ひとけりが許されている。
このひとかきの動作はヒップラインを越えて脚のところまで完全にかききってよく、このとき、最初の平泳ぎの蹴りの動作を行う前に1度だけドルフィンキックの使用が認められている(2015年FINAのルール改正により、ドルフィンキックはひとかき動作とは無関係におこなえるようになった)
スタート、折り返し後の二かき目の動作が内向きの動きに入るまでに頭の一部が水面上に出ていなければならない。 Wikipediaより抜粋
3-2. 泳法
泳ぎのサイクルは「一度かいて一度蹴る」であり、この順序で行う組み合わせでなければならない。このため、折り返し及びゴールタッチの直前でタイミングを合わせるためにサイクルを無視した連続でのかきや蹴りは違反となる。
ターン・ゴールのタッチは両手同時にしなければならない。動作が左右対称であれば、手は水面の上下どちらでもいいし、同じ高さでなくても良い。 Wikipediaより抜粋
以上のとおり平泳ぎについては幾度のなくルール改正が行われ今日に至っています。
私は平泳ぎの競技をずっと長く続けていますので学生時代のルールと今とでは大きな違いがあります。
でも、いかにルールが改正になろうとスタートとターンは競技水泳の腕の見せ所です。
これは平泳ぎだけに限りませんがタッチターンである以上両手でタッチして足で蹴って折り返すのですから出来る限り素早い動作が求められるわけでルールの意味はとても重要ですから今一度チェックしておきましょう。
4. まとめ
水泳競技において平泳ぎはオリンピックを含めて国際競技において日本のお家芸として国際的にも注目を浴びています。
北京、ロンドンとオリンピック平泳ぎに種目で連覇を果たした北島康介選手をはじめ、日本水泳選手権においても渡辺選手と小関選手の一騎打ちは世界記録をかけたレースでもありお家芸となっています。
また最近、19歳の佐藤翔馬選手の台頭も目覚ましい話題となっています。
それは非力な日本人が過去から唯一テクニック勝負ができる種目も平泳ぎなのです。大きなパワーを有していても平泳ぎの特徴である水の抵抗をモロに受ける種目でもあることからいかに抵抗を受けないストロークが最も大切なファクターとなっています。
そんな平泳ぎですが、そのもっともテクニックの差がでるのもターンテクニックです。このターンの成否が勝敗を決し、記録更新のキーポイントでもあります。
水泳選手はビギナーからトップスイマーまでターンの練習は欠かせません。 この記事ではターンテクニックの詳細にわたる解説と、筆者が常々考えている練習のコツなどについて述べてきました。 平泳ぎに関しては指導者の個人個人によって考え方が違い、練習方法も違うと思います。それは平泳ぎと言う種目の特徴なのです。自分にふさわしいフォームとタイミングはやはり個人が練習の中で作り上げていくものだと思います。 それはターンテクニックについても同様です。「これだ・・!」と感じられるターンのイメージが確立するためには数限りない回数の練習を積み重ねる必要があるのですが、少しでもこの記事はそのお役に立てればと思っています。
最後までお付き合いいただき心から感謝しています。ありがとうございました。
なお水泳や平泳ぎに関しては次の記事も興味深いものとなっていますのでご一読いただければ幸いです。
初稿:2019年4月10日
2稿:2020年1月17日
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。