水泳の練習ドリルで最も基本となるキック、でも水泳経験の浅い初心者にはクロールのバタ足はとても苦しい練習で誰もが敬遠したい練習メニューです。
クロールでいえば推進力を得るためにストロークとキックの割合は7:3と言われています。平泳ぎでいえばキックのウエイトは6~7割と言われています。
でもキック力に自信があれば安定したストロークが実現でき、より上手に、より速く泳ぐことができます。
すなわちキック練習こそ水泳の上達のコツともいえる最高の練習メニューなのです。
キック練習は決しておろそかにできないことを念頭にこの記事を読んでいただけば何か感じていただけるものがあると思います。
1. 水泳のキックとそのコツ
クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライと水泳の基本4泳法が上手に泳げるようになるにはまずクロールから、ビギナーが水泳レッスンで学ぶにもまず「初めてのクロール」というプログラムがどこのスポーツクラブでも用意されていると思います。
でもクロールは子供の頃に一度はやった経験のある泳ぎ方です。
ところがクロールのレッスンで最初に行うのがバタ足というキック練習!
ビート板を使って両足をバタバタさせるのだけれども全く前に進まず、ただただ足が辛くなるばかりです。
なんとかできないのかと思ってもあせるばかり・・・
ここではこのコツなるものについてアドバイスさせてもらいます。
1-1. 最初から上手にできるわけがない!
子供の頃、自転車に一人で乗れるようになるのにどれだけの日数がかかったでしょう。
私は後ろを持ってもらう人もおらず、補助輪の着いた自転車でもありませんでした。
近所の家の使わなくなった子供用の自転車を貸してもらい、何度転んで足を擦りむいたかしれません。
数週間はかかったでしょうか、どれだけの日数がかかったか覚えていません。気が付けばもう一人で上手に自転車をこげるようになっていました。
水泳のバタ足はこの自転車に似ていると思います。
気が付けば出来るようになっています。でも最初からは絶対と言えるほど前に進みません。
足首がどうの下半身がどうのといろいろ言われても、停止している状況ではなく動いている中で何かを操作しようと思ってもそれは無理です。
自転車なら、重心とか足の踏み込みとか言われてもそんなことはわかりません。ただただペダルを踏んで動くしか手がありません。
水泳も同じです。ともかく足をバタバタさせて前に進むより方法がありません。
そしていつかわかりませんが、気が付けば自転車が操作できるようにバタ足も同様に前進できるようになっているのです。
プールに常備してあるビート板を使ってバタ足から始めましょう・・・!
1-2. キック練習で前に進む実感を得る
次に少しでも前進できれば自転車に乗れたのと同じです。
でも自転車ならすぐに転びます。脚が着くサドルの位置なら足が着きますが、大きな自転車なら転びます。
バタ足では失敗してもケガをするリスクは決してありません。しばらくするとわずかですが少し前に進むようになります。前に進む感触を身体全体で実感しましょう。
注意することは脚の筋肉が辛くなるようなキックは好ましくありません。辛くならないようなキックの方法を見つけ出しましょう。
1-3. 日々少しずつ距離を伸ばす
水泳は非日常の環境の中で行う運動です。それも水の中です。それは宇宙に出たようなものです。
最初からスイスイと泳げたりキックができる方が異常です。
苦しくなるまではやらない!
苦しくなる前に止まって、水中ウオーキングをやりながら疲れを癒しましょう。
疲れは苦しくなり、楽しくなくなってしまいます。ですから楽しくキック練習をするためにも、歩きながら休息をとりましょう。
でもコツというか注意事項は決して止まって休まない意思が大切です。歩いてさえいれば水の中で水の抵抗を受けます。
水という環境に身体が順応して行くことを決して忘れないでください。
水泳のキック練習は水中ウオーキング中にも十分に生きています。
しっかりとかかとから着地、つま先を立ててプールの底を蹴ることで足首が柔らかくなり、水泳のキック練習につながります。
1-4. 力任せでキックしない
次は力任せでキックしない!これは力任せでキックをしても推進力に繋がりません。
それは力一杯水泳キックをしてみてください。次にその半分の力で緩やかにキックしてみてください。
どちらが前に進むかです。大して違わない感触に気づかれるでしょう。
大きなパワーで推進力を得るにはそれに相応しい抵抗のない体型を維持しなければ意味がありません。
1-5. 浮力と推進力
キックにおける浮力と推進力についてですが、例えばクロールで考えますと、ビート板を支えにして水中で浮き上がりじっと静止すると自ずとビート板の浮力の影響を受けて上半身は浮いています。
でも下半身は徐々に沈んでいきます。
ところがバタ足を始めると両脚は次第に浮き上がります。バタ足によって浮力が生まれます。
でも下半身を水面上に浮き上がらせるだけでも脚をバタバタしなければならず大変です。では次に推進力を生じさせるにはどのようなキックにすればいいでしょう。
水を後ろに押し出すようなキックをしなければなりません。
脚を考えると太もも、膝、向こう脛に裏のふくらはぎそして足首、脚の甲、脚の裏とどの部分が一番水を後方に押しやるには適切かと考えてみてください。
答えは脚の甲です。この脚の甲を上手に真下に蹴るのではなく、後方に蹴り出すようなキックが相応しいのは考えればすぐに理解されると思います
水泳は脚の大きな選手が有利と言えます。それは脚に足ひれがついていると考えれば分かりやすいと思います。
1-6. 最大のコツは足首と足の甲
水泳は足首の柔らかさが生命線、足首の固い人は水泳は速くならないと言えるでしょう。
1-7. 小刻みなキックと大きな振幅のキック
では次のポイント、小刻みなキックと大きな振幅のキック、推進力を得るのにどちらが効果的か?
大きな振幅で脚を大きく蹴り込み、蹴り上げる、大きなパワーは生まれますが、同時に大きな水の抵抗を受けてしまいます。
かといって小刻みなキックでは十分な推進力には力不足するとの考えから、多少の水の抵抗は犠牲にしても大きく回転数の多いキックを誰もが練習しているのです。
それにその日の調子によって回転数の多い少ないがスピードにどう影響しているか、日々の水泳練習で試すことは簡単です。
少し上達すればどのキックの方法が自分に一番相応しいキックなのかをいつも心に留め置き、修正すべきは修正する。
常によりベターなキックを心がける配慮が重要です。
ここまで主にクロールのキック(バタ足)を例にお話をさせていたきました。
1-8. 各泳法毎のコツ
ここからは水泳種目毎のキックでのコツというか注意すべきアドバイスをします。
1-8-1. クロールキック
なおクロールのバタ足については次の記事に詳しく解説してありますから参考になさってください。
1-8-2. 背泳ぎキック
では次に背泳ぎキックです。クロールを仰向けにしたキックが背泳ぎキックとなります。
クロールと同様に脚の甲で水を後ろに水を押しやる足の動き、足首の柔らかさが大切です。
そのためには力強い脚を甲を使った蹴り上げ動作が重要です。
むしろ蹴り込む意識の方が重要かもしれません!
強く蹴り込んだ反動をうまく使って強い蹴り上げが生まれると思います。
コンビネーションストロークでは右左両脚のキックのタイミングは微妙に異なっています。
無意識不自然にキックを打っているようでも、ある一定のリズムというかタイミングがあります。
これがトレーニングを積み上げることで自分に相応しいキックが生まれてくるのです。
1-8-3. 平泳ぎキック
平泳ぎのキックのコツはフィニッシュにあります。
最近水泳の選手は膝を締めて脚の開きも少ないキックで挟み込むキックというよりも蹴り出すようなキックで推進力を生み出しています。
でも挟み込もうと蹴り込もうと大切なのはフィニッシュに力点を置いて最後まで集中して平泳ぎキックを完成させましょう。
そうすれば、押し出された水が最大限推進力に繋がっていきます。
脚が伸びきっていない状態で脚を引きつけても十分な推進力は得られず疲労につながります。
回転数が上がり一見速く見えますが、加速しているとは思えません。
平泳ぎキックのフィニッシュを完成させるには脚の力はもちろん、体幹部の筋力が必要不可欠です。
フィニッシュの時には身体はまっすぐなストリームラインを作りもっともスピードが出ている瞬間なのです。
このイメージをどうぞ習得できるように頑張って練習を重ねてください。
1-8-4. バタフライキックのコツ
最後はバタフライキックです。これは別名ドルフィンキックとも言います。
このキックの汎用性はとても高く、どんな水泳種目においてもスタート、ターン時において1回(平泳ぎ)もしくは15mまでこのキックの使用が認められています。
水泳のキック練習でご自分の専門種目以外でも是非バタフライキックをよく練習されて、キックで強いスピードが得られるように練習しましょう。
そしてこのキックは仰向けでもよく向きでもどんな体勢でも打てるように練習するといいでしょう。
もし今日の練習であまり練習時間が取れない状況であっても私ならバタフライキックだけは練習を排除しないでしょう。
2. 初心者にお薦めする効果的な練習メニュー
ではここからは水泳種目毎にキックの効果的な練習メニューを紹介していきます。
まずはクロールからです。
2-1. クロール
クロールのキック練習で一番オススメ!効果的な練習メニューは何と言ってもグライドキック
2-1-1. グライドキック
ビート板を使わない手をまっすぐ前に伸ばしてキックで身体全体を浮かせるようなパワフルなキック練習です。
もしまだまだ難しいようであっても出来るだけ一番小さなビート板を使いましょう。
そしてビート板の浮力に頼らないご自身のキックだけで浮力と推進力を得るための練習メニューです。
この練習は呼吸を必要とします。顎を上げて呼吸も、横を向いての呼吸もやりやすい方でOKです。
2-1-2. 顔上げキック
小さなビート板を使っても良いですが、ビート板を使わずに顔を上げてのキック練習です。
これは相当キツイ、難しい練習ですが、パワーをつけるには最高の練習となります。
2-1-3. 横向きキック
グライドキックで壁を蹴ってスタート、身体を完全に横を向き横にキックを打つ練習です。
正しいストリームライン(水中姿勢)と強いキック力がなければまっすぐに前進できません。そして強いバランス感覚が養われます。
息継ぎのやりやすいサイドを向いてのキックで須賀、苦手なサイドでも練習してみましょう。
かなり難しいキックとなります。
2-1-4. 今日つけ姿勢キック
腕を今日つけの位置、すなわち太もものところで固定させたキック練習です。
肩に大きな抵抗を受けますので負荷が強くなります。
キックの負荷を高めるために顔上げキック同様の練習として覚えておいてください。
2-1-5. 脚ひれを使うキック
所属クラブに脚ひれ(フィン)がある場合の練習メニューですが、脚ひれを使って、脚ひれを有効に推進力に変えていくにはどのような脚の動きをすれば良いのかが理解できる練習です。
そしてうまく活用できればどの程度のスピードとパワーが生まれるのか是非体感なさってください。
足首の使い方が非常によく理解できると思います。
2-2. 背泳ぎ
背泳ぎキックはクロールのに準じて同様に基本グライドキックです。
ほとんどクロールと同じ練習メニューとなりますので省略をしますが、腰が沈まないようにするためにはどのようなキックを打てばいいのかをご自身に問いかけながら練習を行ってください。
はじめのうちは腰が沈まないようにビート板を胸に抱えて練習をするのをお勧めします。
2-3. 平泳ぎ
平泳ぎにおいてもグライドキックがメインの練習メニューです。
平泳ぎの上達は100%キック!と肝に銘じて欲しいと思います。
2-3-1. 平泳ぎ練習メニューをグライドキックで消化する
すなわち今のベストタイムをグライドキックで更新するという感覚でキック練習に臨んで欲しいと思います。
グライドキックで自己ベストが更新できれば大きな自信と素晴らしいキック力が得られます。
でもこの時ストロークに入るとタイミングが合わず失速する原因にもなりかねません。
全ての練習をグライドキックで消化とは言いましたが、コンビネーションスイムも合わせてタイミングの調整を忘れないようにしましょう。
2-3-2. スタート、ターン時におけるドルフィンキック練習
そしてドルフィンキック(バタフライキック)の練習も大きな武器になります。この練習も忘れないように日頃からバタフライキックの練習もやっておきましょう。
2-4. バタフライ
私がオススメするのはバタフライにおいてもグライドキック練習です。
ガンガンバタフライキックを長い距離、短いダッシュ、インターバル練習と平泳ぎ同様にキック力強化のための練習を繰り返しましょう。
バタフライはエントリー(入水)直後の強い第1キックとストロークフィニッシュ寸前の第2キックそれぞれ個人差こそあれ強弱があると思います。
常にこの第1、第2を意識してイメージしながらグライドキックを練習してください。
回転数の少ないリズム、回転数の多いハイピッチなリズムといろいろなバターンがありますが、常にコンビネーションスイムを意識したキックを心がけましょう。
3. キックとストロークのタイミング
この記事はキックに焦点を絞ってお話ししていますが、何と言ってもコンビネーションスイムです。
いくらキック力が強化されてもコンビネーションスイムでタイミングを狂わせ失速するようでは何にもなりません。
しっかりとコンビネーションスイムで強化してキックを生かすストロークを研究していきましょう。
そのために必要な練習メニューを紹介しましょう。
3-1. 個人メドレー練習
ご自身の専門種目の練習量は多くてもその他の種目練習は少ないと思います。
従って、練習が単調となり、タイムも大きな進展がないのが普通です。
そして自由形専門の人は遅い平泳ぎを練習することで、遅いスピードが体感できます。
この違ったスピード感がブレイクスルーを起こさせてくれます。
そして何よりも楽しいです。気分転換にもなります。
どしどし個人メドレー練習を加えていきましょう。
もちろんコーチの指導を受けている場合には身勝手は許されませんが、少しモチベーションが低下している時などには、
「個人メドレーで行っていいですか?」とお願いしてみるのもいいと思います。
3-2. スピード練習
その時のテーマは大きなストロークが良いのか、ピッチ泳法が良いのか常に試す気持ちを持っていてください。
そしてコーチにもアドバイスがもらえるならどんどんアドバイスをもらいましょう。
25mや50mの短距離なら無酸素運動に近い回転数とパワー勝負ですが、100m以上になると、どちらが相応しのか個人差があります。
スピード練習を随時、練習メニューに入れて効果測定をしていきましょう。
4. まとめ
水泳種目のキック練習についてフォーカスをあて、上手になるそして速くなるためのコツ、具体的な練習メニューも併せてここまでお話をさせてもらいました。
筆者の私はもう60代の半ばを過ぎました。
昨年の記録を更新するのは至難の業です。練習をしすぎれば肩や腰や膝にダメージがあり無理はできません。
でも少しでも速くなりたい!その気持ちは幾つになっても変わりません。
その意識、モチベーションを維持させていくにはキックの練習しかないと私は考えています。
脚の筋肉の衰えはゆがめません。陸上でのウオーキングやスクワットなど食べる物にも気をつけて筋肉をつけなければタイムの維持が難しくなっています。
そしてキック力さえ衰えなければなんとか勝負ができると信じています。
水泳経験の浅い方にはまず水泳に必要なキック力をつけていきましょう。
若い皆さんにはすぐに慣れてキック力はあっという間に鍛えられます。
定期的にプールに通ってキック練習に精を出しましょう。すぐに上手になると思います。
そして中上級者の皆さんにはよりキック力を鍛えてより上手により速い記録を目指してこれから長く水泳を続けていって欲しいと願いつつ今回の記事は以上とさせていただきます。
最後までお付き合いいただき心から感謝しています。ありがとうございました。
なお以下の記事も参考にしていただければ幸いです。
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。