水泳はとても消費カロリーが高くダイエットには効果的とよく耳にします。
でもスポーツクラブでいつも泳いでいる人の体形はいつも同じで変わらず、とても痩せてきているようには見えません。
これってどういうことなんでしょう・・・
長年、水泳とともに生きてきた筆者自身の経験も含めて科学的な計算事例を示しながら、興味深い内容でお伝えしていきたいと思います。
そして水泳が上手になりたい人、ダイエット目的で水泳をしている人にとっても、水泳とカロリー消費のメカニズムについて正しい理解をもっていただけると思います。

目次
1. 水泳のカロリー消費の特徴
クラブのプールで見かける多くのシニアの方々は1年も2年も相当長い期間水泳を続けていらっしゃいますが、ほとんど体形も技術も変化が見られません。
練習をみていると、25mで必ず休憩する人は1年たっても全く同じです。
止まらずにクロールで30分も泳ぐ人も全く同じです。
それはそれでいいのかもしれません。健康維持のために習慣づけているのでしょう。

そのために一日の練習の中で、それぞれの練習メニューで心拍数を140~150になるように頑張っています。
さらに短い距離の練習のうち1本は必ず全速力で泳ぐようにしています。最大酸素摂取量が低下しないように頑張っているのです。
1-1. 楽な水泳では消費カロリーは増加しない
今までくどくどと数字を並べて解説してきましたが、みなさんどのようにお感じになりましたでしょうか。
消費カロリーは水泳が上手とかそうでないとかはあまり関係がないのではと思っています。
ご自分がどんなレベルであろうと、一生懸命に水泳を頑張っている人は大きなカロリー消費があります。
上手な人が楽々と泳いでいるようであればそれはほとんどカロリーを消費していません。もちろん何もしないよりはましですが・・・
もしあなたがビギナーであるならば、25mをなんとか泳げたとします。きっと貴方の心拍数は140〜150ぐらいに高くなっていると思います。
でもほとんどの人は25m泳いだ後、壁に持たれて身体が冷えるほど休息しています。
また、泳ぎだして心拍数が140を超えるのはプールのセンターラインを超える頃でしょう。
したがって心拍数が140を超えている時間は25mで数10秒だと推測されます。
これではなかなかビギナーの人でも消費カロリーを上げるには無理がありそうです。
1-2. 消費カロリーを上げて心肺機能を強化
次の章で示す運動強度(METs)表を見て欲しいのですが、
クロールの普通の速さで8.3 背泳ぎのレクレーション4.8 平泳ぎのレクレーション5.3 バタフライ13.8
ともデータがあります。
1-2-1. 頭が水中にある事で消費カロリーが向上
ここで背泳ぎと平泳ぎはクロールに比べて運動強度が極端に低くなっています。
でも平泳ぎのトレーニングになると10.3に倍ほどに跳ね上がります。これは顔を水中につけており、呼吸負荷が高いのが原因だと私は考えています。
1-2-2. 心拍数計測が必須
私は心拍数の計測を欠かしません。
6秒間で13回ですと心拍数130です。
私ですとクロール500mで14〜15回です。そして50mのウオーキング後には8回ほどに戻ります。
これを継続することで今日の水泳の消費カロリーをおおよそ判断する事ができます。
1-3. 十分なアップとダウンが必要
当初の運動強度(METs)表を見てもらったように水泳という水中運動は陸上運動に比較してかなり運動強度が高いものです。
バタフライに関してはマラソンと匹敵するくらいのMETsです。
最初は本当にゆっくりのスピードで、そしてあまり遅いとかえって疲労するので一番楽なスピードでアップするのがおすすめです。
ウオーキングもだんだんそのスピードを上げて身体を温めましょう。
そして忘れてはいけないのがクールダウンです。
ゆっくりと泳ぐ、ウオーキングする、プールの底を蹴ってイルカ飛びをしながら蹴伸び(ストリームライン)の練習など
ご自分の好きなクールダウンを忘れないようにしましょう。
それからプール施設にはジャグジー、ミストサウナ、お風呂が併設されていますので、これら施設を十分に活用して疲労した腕や肩、足首、膝、股関節などしっかりとマッサージをすることをお勧めします。
1-4. 水中ウオーク、陸上ウオークを忘れない
私は50代の頃、水泳をいう運動しているから運動不足とは無縁だとタカをくくっていた頃があります。
ちょうど管理職で個室での執務でした。そして通勤も自家用車、door to doorで全く歩かなかったのです。
すると、気が付いた時にはもうふくらはぎの筋肉が削げるように退化してしまいました。
そして部下から足を悪くされたのですがかと言われるほど、歩行もままらないほどの筋肉退化を来たました。
水泳は楽に泳ぐ程度では特に足の筋肉は退化するほど運動エネルギーがありません。
陸上ウオーク、水中ウオークは決して欠かさないこと、これはカロリー消費の問題とは関係なく、忘れないで欲しいです。
そして関係ないと言ってもしっかりと消費カロリーを稼ぐ事が出来ます。
1-5. 消費カロリーの試算
カロリー(kcal)=METs×運動時間(時間)×体重(kg)×1.05
で求められます。
この式に当てはめて各泳法スタイルのカロリーを求めて表してみましょう。
前提条件(身長176cm、体重78kg、男性、スイミング時間0.5時間)
項目 METs カロリー(kcal)
クロール(普通の速さ) 8.3 340
クロール(速い) 10.0 410
平泳ぎ(レクレーション) 5.3 217
平泳ぎ(トレーニング競技) 10.3 422
背泳ぎ(レクレーション) 4.8 197
背泳ぎ(トレーニング競技) 9.5 389
バタフライ(全般) 13.8 565
水中歩行ゆっくり 2.5 102
水中歩行速い 6.8 278
歩行、散歩 3.5 143
歩行、運動目的で速く歩く 4.3 176
マラソン 13.3 544
引用:「身体活動のメッツ(METs)表」(独)国立健康・栄養研究所から抜粋
カロリー計算は筆者データでの試算
前提条件として示した数値は私の今日のデータなのですが、貴方の消費カロリーを計算するには体重の比で換算すればおおよそのカロリーが求めらます。
スイミングの高いカロリー消費に驚かれたと思います。この引用先の研究所ではどのようなモデルのデータなのかわかりませんが、各泳法スタイルの比較はこんなものではなかろうかと私も思います。
2. 泳法別カロリー消費量
ではここで泳法別にカロリー消費量を見ていきましょう。
2-1. クロール
クロールのカロリーは普通の速さで340kcal、速い場合で410kcalです。普通の速さでも速い場合でもさほどの差がないのがわかると思います。
その原因は顔を常に水中に沈めているからだと私は思います。そして呼吸のタイミングになるまで水中では息を吐き続けています。
2-2. 平泳ぎ

平泳ぎのカロリーはレクレーションで217kcal、トレーニング競技で422kcalです。表現が普通の速さ、速いという表現からレクレーション、トレーニング競技という表現に変わりました。
それはこの平泳ぎのスタイルに起因するからでしょう。すなわち、レクレーションでは顔を上げて泳ぐことができます。
トレーニング競技ではクロールと同様に顔は常時水の中です。この差に現れています。
さらに平泳ぎのトレーニング競技はクロールよりの高い数値です。
これは私が平泳ぎが専門なので良くわかりますが、競技スタイルでは、クロールより運動強度が高いのは歴然です。
水中にある身体を呼吸をするために浮き上がらせるために必要な運動の強度はクロールの比ではありません。
2-3. 背泳ぎ

背泳ぎのカロリーはレクレーションで197、トレーニング競技で389です。背泳ぎのレクレーションの場合は平泳ぎよりもさらにカロリーが低いです。
やはり背泳ぎがレクレーション、競技にかかわらずカロリーが低いのは、常に顔が水の上にあるからだと思います。
2-4. バタフライ

バタフライのカロリーは全般だけで565kcalで4つのスタイルの中でカロリーが最高の値を示しています。
これはスタイルの難しさもあると思いますが、私の見解では全身が水中にある時間が一番長く、呼吸は平泳ぎと同様にクロールほど容易ではないことが原因だと私は思います。
バタフライは平泳ぎほどは難しくないスタイルです。バランスとタイミングさえ会得すれば優しいです。
でもひとたびスピードを競うとなると、苦しい水中姿勢に耐えていかねばなりません。
そして最も特出すべきことはマラソンの消費カロリーに匹敵するということです。
2-5. その他の運動
陸上歩行や水中歩行などのカロリーについても比較対象の意味で計算してありますので検証してみましょう。
陸上歩行は散歩程度で143kcal(30分)、速く歩いて176kcal(30分)です。
今朝の私のウオーキングのデータは60分、270kcal、7500歩です。METs表で計算したデータとダイエットアプリでの実測値とほぼ同じ値です。
それにひきかえ、水中ウオークはゆっくりで102kcal、速くで278kcalです。
陸上ではどう歩こうとさほど変わらないのですが、水中ではその差は3倍近いカロリーを消耗することになります。
2-6. 筆者の私見
私は長年、スイミングを暮らしの一部として楽しみもし、青春の炎もこのスイミングで燃やしてきましたので経験的にカロリー消費のスタイル別の差は体感しています。
この各スタイルのカロリーについてこんなものかなと思います。4つのスタイルのカロリー比較も、歩行、そしてマラソンの疲労度とバタフライの疲労度もこんなものかなと思います。
バタフライを有酸素運動として捉える人はいないと思うからです。
でももしビギナーの人がスイミングを考えたときに、泳法スタイルなど考える必要などないと断言できます。
どんなスタイルであれ、泳げばいいのです。
そして可能なら顔を水に沈めて呼吸のタイミングを会得してスイミングを続ければ素晴らしいカロリーの消費量を稼ぐことができると思います。
その意味で水中歩行も含めてスイミングの有効性をより一層感じています。
3. 失敗しない効果的なダイエット法

では失敗しない効果的な水泳ダイエットについて解説していきます。
まずは水泳における消費カロリーはどの程度の値なのかは前章で運動強度から検証してみたところです。
もう一つの試算方法があります。
それは心拍数からも計算できます。
3-1. 心拍数から消費カロリーの計算
心拍数と運動強度には相関関係がありますので以下により計算できます。
・運動強度 :心拍数 ÷ 最大心拍数
・酸素消費量 :最大酸素摂取量(VO2max:ml/kg/分)× 運動強度
・総酸素消費量 :酸素摂取量×運動時間×体重÷1000
・消費カロリー :総酸素消費量×5kcal
計算例
・体重(kg) :50kg
・運動時間(分) :30分
・最大酸素摂取量 :37ml/kg/分
・心拍数 :140拍/分
・年齢(才) :30才
・最大心拍数 :220-30=190
・運動強度 :140÷190=74%
・酸素摂取量 :37×74%=27.4
・総酸素消費量:27.4×30分×50kg÷1000=41.1
・消費カロリー:41.1×5=205.5kcal
と計算されます。
3-2. 消費カロリーについて注意するポイント
ここで言いたかったことはネット上で記載されている運動ごとの消費カロリーというのは各人の個人差があって一概に言えるものではなく目安にする程度にとどめておくことが大切だということです。
私のように、シニアになると先ほどの最大心拍数は220-65=155です。
そして私はいつも泳いでいる時は心拍数を140~150になるように考えて泳いでいます。
そうなるとこの公式にあてはめれば運動強度は限りなく100%に近づき消費カロリーもかなり高くなってきます。
また最大酸素摂取量についても下表に示してあります。
18~39才 | 40~59才 | 60~69才 | |
男 性 | 110(39ml/kg/分) | 100(35) | 90(32) |
女 性 | 95(33ml/kg/分) | 85(30) | 75(26) |
( )内は最大酸素摂取量を示す。
表に示す強度での運動を約3分以上継続できた場合基準を満たすと評価できる
引用:運動基準・運動指針の改定に関する検討会報告書(平成25年)厚労省
3-3. 効果的な水泳ダイエット方法
ここまで水泳のダイエット効果が高いことを解説してきましたが、まず、水泳は運動強度が高くて消費カロリーが高いという思い込みは捨てましょう。
子供の頃プールで遊んで帰宅した頃のことを思い出してみてください。
どんな感じでしたか、もうグッタリと食欲もなく、疲れ切った思い出がありませんか・・・
そうです。しっかりと水泳で運動をすると、その疲労感は半端ないのです。消費カロリーが極端に高いのです。
それに呼吸筋の疲労が強く、ゼイゼイと喉がなり、少し風邪をひいたような症状です。
3-4. よく噛んでゆっくりと
水泳運動による消費カロリーはしっかりと栄養バランスの優れた食事で栄養とエネルギーの補給が大切です。
得てして、ここで失敗するケースが多いので注意が必要です。
特にシニア世代には炭水化物によるエネルギー補給よりも栄養バランスに重点をおきましょう。
食事に関してはよく噛んでゆっくりといただく大原則を忘れないようにしましょう。
この事が過食防止、栄養吸収に優れる。
食事のこと栄養バランスの良い食材と食事メニューなどについては次の拙稿を参考にされると幸いです。
3-5. 楽しい水泳ダイエット
ダイエットを目指す方にとって水泳は素晴らしい運動です。貴方の着眼点は素晴らしいです。
どうぞ多くのダイエッターにこの素晴らしい運動である水泳をお勧めしたいと思います。
3-5-1. 非日常環境
水泳の一番優れている点は何と言っても非日常環境で行う運動であることです。
水の中というのは水の温度、抵抗、浮力、波、など陸上にはない刺激のある環境です。
当然ながら陸上よりも運動強度が高く、陸上の運動量の1/2で相当のカロリーを消費できます。
ダイエットには全く合理的な運動といえます。
もしこの水泳や水中歩行、アクアピクスなどの水中運動が楽しい運動であるなら最高のダイエット運動だといえます。
どうぞ、これら水泳が楽しくなれるように水の中の楽しみを見つけて欲しいと思います。
3-5-2. 水泳の楽しみ
私が感じている水泳の楽しみをあげると
・仲間との語らい
・水着、ゴーグルなどのファッションの楽しみ
・スタイルが良くなる(下半身が細くなる)
・泳ぐ距離の拡大
・新しいスタイルの実現
・マスターズ大会への楽しみ(同年代、大先輩との再会)
・大会結果の楽しみ(年代区分が上がればライバルが減少)
ざっとこんな楽しみが頭に浮かびます。
他のスポーツに比較して格段に低コストです。
そして芸能人や有名人を見渡して、水泳経験者はとても美しい美貌の持ち主ばかりです。
どうぞ、ご自身の楽しみを見つけられて、長く続けられることを願っています。
3-6. 見られている
プールデビューを考えると、少し尻込みするかもしれません。人前で水着姿になるというのはとても勇気がいることだと思います。
私自身、水着姿でプールサイドに出るゲートを通るとき、意識的にお腹が凹みます。そして背筋をピーンと伸ばしてスタイル良くしようと気合が入ります。
この見られているという感覚はスポーツでは少ないのかもしれません。
スタジオのレッスンが満員でレオタード姿の女性であふれていてもプールで泳ぐ人はまばらです。季節が寒くなればなおさらです。
それだけに、プールデビューは水着デビューと言っても過言ではないでしょう。それに女性はスッピンです。これは相当に勇気が必要です。
前かがみで、暗い顔をしている人をプールでは出会った事がありません。
どうぞ水泳でさらにカロリーを消費させて美しくスマートになって見ませんか・・・
4. まとめ
ここまで、水泳のカロリー消費について述べてきました。
そしてダイエットと水泳の関係についても私見を付けさせていただきました。いかがでしたでしょうか・・・
ここで感じることは、この歳になるまでずっと水泳を続けてきたこと、改めて幸せだっと実感しています。もし水泳を途中で断念していたら今頃どうなっていただろう・・・
きっと、病に倒れてこの世に存在していなかったのでは!とさえ思います。私の健康はこの水泳があったればこそです。
単に水泳は運動強度が高くてカロリー消費が高くダイエットに向いているなどという単純な問題ではない気がするのです。
80歳、90歳の大先輩が若い人と同じように水泳を頑張っているのです。
そして同様にレースで記録更新を目指して楽しんでいるスポーツです。とても手軽なスポーツです。
重篤な病で伏せる以外は水泳は可能です。泳いでさえいれば、きっと心身ともに健康でいられると私は信じています。
どうぞ、共に、これからずっと水泳を楽しみましょう・・・・
ここまで長く読んで下さり心から感謝します。
なお以下の関連記事も興味深い内容となっていますのでご一読いただければ幸いです。
けんこう水泳運営者の石原(@T.ishihara)です。